カズ超えで、ゴンに急接近! 東京の元日本代表FW前田遼一(33)が、6年ぶり4度目のハットトリックを決めた。神戸戦の前半38分に豪快に先制点を決めると、後半24分に泥臭く2点目。同33分にはトラップしたボールがそのままゴールイン。チーム全得点をマークし、勝利した。日本人選手では、三浦知良の最年長記録を更新する33歳11カ月3日での達成。J1通算得点数でも、157点で1位の中山雅史の背中を追う広島FW佐藤寿人、川崎FのFW大久保嘉人に負けじと、145得点(5位)に伸ばした。

 6年ぶりのハットトリックはあっけなくゴールマウスへ吸い込まれていった。後半33分、前田は右から神戸ゴール前へ全力で入っていった。左でためをつくるMF東。ハットトリックを取らせようと、優しさがこもった横パスに勢いよく飛び込んだ。右足でコントロールしようとしたボールは神戸守備網をくぐりぬけて、コロコロとゴール左へ。「完全にトラップミス」と正直に明かすシュートでもゴールはゴール。スタンドと一緒に喜んだ。

 3点を振り返り、一番うれしいゴールを問われるとこう言った。「1点目の先制点。ここにきてから先制点を決めていなかった。チームも最近なかったし、一番よかったと思う」。前半38分、後方中央からMF高橋が運ぶボールとゴールが見える位置を取るため、前線で右へ流れ角度をつけて待ち受けたのはFWの本能。ニアサイドのゴールバーをかすめる鋭い右シュートは、さすがの軌道だった。

 後半24分のニアサイドへ飛び込んだ2点目こそが「一番自分らしい」というが、その姿は自然と「尊敬するFW」と重なる。通算145得点で、広島FW佐藤と川崎FのFW大久保とともに、1位の中山の背中を追い続けている。「本当にあの人の背中を見て育った」。泥臭く、ゴールとボールだけを見て果敢に飛び込み続けて、あと12点。なかなか届かない大記録に、ゴールをするたびに、中山雅史の大きさを再確認する。

 その背中が現役復帰を目指し、再び動きだしたことに驚きを隠せないが「中山さんらしい」とも言う。昨オフ、中山と一緒に戦った磐田を離れ、東京入りを決断したときメールで報告。「頑張れよ」と短く返信された文面に、叱咤(しった)激励を感じ取って新天地に臨んだ。今季8点目。「チームメートのおかげです」と何度も繰り返し、東京のエースらしくなってきた。【栗田成芳】

 ▼ハットトリック 東京FW前田が神戸戦で3得点。今季J1で5度目、通算214度目。前田は磐田時代の09年10月25日の名古屋戦以来、6シーズンぶり4度目。J1で4度のハットトリックは歴代5位タイとなった。また、33歳11カ月3日でのハットトリックは、FWカズが京都時代の00年11月23日のV川崎(現東京V)戦で達成した33歳8カ月28日を更新する日本選手最年長記録となった。外国人選手を含めると、93年の鹿島MFジーコの40歳2カ月13日が最年長。