強心臓ルーキーがサポーターの心をつかんだ。ベガルタ仙台DF永戸勝也(22)に「緊張」の言葉はなかった。クラブ史上3人目(J1に限る)の新人開幕スタメン。満員のスタンドから期待を込めた「勝也」コールを受けても、「ウオーミングアップの時から楽しいと純粋に思っていた」と初の大舞台を楽しむ余裕があった。

 まさに怖いものなしだった。左ウイングバック(WB)で相手陣内を切り裂いた。左サイドを駆け上がり、クロスを供給。「自分らしさを出せた。左足を意識させて、後半は相手が修整してきたところで右足(でのキック)を出せた。理想的なプレーができた」と思い切りの良いキックとドリブルで好機を幾度も演出し、攻撃の起点となった。渡辺監督からの指示も「思い切ってやれ」のみ。伸び伸びと相手を抜き去った。

 打たれ強さもあった。前半20分。ゴール前の混戦で相手GKの体勢が崩れる。決定的な場面だったが、シュートをゴール右へと外した。「思い切り振ったんですけど当たらなかった。外した時はヤバイと思ったんですけど、すぐに切り替えた」と失敗を引きずらなかった。出場89分間闘志あふれるプレーを続け、この日の敢闘賞(お米1年分)を獲得。「周りに外したのにお米もらったのかとイジられましたけど、勝てばいいと思ってます(笑い)」と精神的なタフさを見せた。

 ピッチから退く際は大きな拍手を浴びるも、自己評価は「6、70点」と控えめ。期待値大のデビュー戦を終え、次は「得点につながるプレーを早く見せたい」と初得点に狙いを定めた。【島根純】