浦和FW高原直泰(28)が「競輪トレ」で強化した下半身を駆使し、6年ぶりのJ復帰を飾るゴールを狙う。16年目を迎えたJリーグは8日に開幕する。横浜とのアウェー戦を前に高原は7日、さいたま市内で非公開練習に臨んだ。5年間のドイツ時代、ひそかに自転車トラック(ピスト)競技の練習を自主トレに導入。欧州で戦える瞬発力と安定感を身につけて日本に戻ってきた。リーグ開幕戦は苦手とするデータが残るが、注目を浴びる初戦から格の違いをみせつけるつもりだ。

 開幕にかける集中力を研ぎ澄ませた。非公開練習を終えた高原は「今日は(取材対応を)やらないんで、すみません」とだけ口にすると足早に練習場をあとにした。中村GMは「プレッシャーのある中でやってやろうとする感じがある。明日は(浦和所属としての)お披露目。かけるものはあるよ」と横浜戦に臨む意気込みを代弁した。

 開幕戦は欧州で培った実力を披露する舞台だ。5年間にわたるドイツ時代、知人のトレーナーに勧められ、自主トレで競輪選手の練習メニューを取り入れてきた。専門コーチの指導のもと、ピストと呼ばれるトラック競技自転車で下半身を鍛え抜いた。ブレーキはなく、車輪も細い。バランスを崩せば落車する難しい異色練習を続け、ドイツの屈強なDFに負けない下半身、DFに囲まれてもシュートを打てる瞬発力を身につけた。

 実は、高原のリーグ開幕戦には苦いデータが残っている。磐田入りした98年の開幕戦は途中出場ながら1得点をマークしたが、以後は磐田、アルゼンチン、ドイツでもゴールに縁がなかった。6日には「開幕戦は大きな試合だし結果を出して2戦目のホームにつなげたい」と意識。中村GMから食事にも誘われたが「開幕前までは集中したい」と断った。40件以上あった個別インタビューも一切、応じなかった。不得意な開幕戦を克服するため、メンタル的な準備も整えてきた。

 高校時代から高原を知る平川が「何人に囲まれたりしてもキープするし、無駄にボールを持ったりしない。手本というか、海外でやってきた厳しさを見せてくれる」と言うほど、既にチームの仲間にも格の違いを見せつけている。磐田時代とはスケールが違う。異色特訓で進化した高原が、アジア王者の浦和をけん引していく。【藤中栄二】