<J2:仙台3-2山形>◇第14節◇18日◇ユアスタ

 ベテランの涙が、大量3ゴールを誘発する劇的な逆転勝利を呼び込んだ。前半を0-2で折り返したハーフタイムに、失点を痛感した仙台DF岡山一成(30)が号泣。その姿を見たイレブンが奮起し後半、一挙3得点を挙げた。今季初の逆転勝ちで4連勝の仙台は、自動昇格圏の2位に浮上。一方、山形は後半にDF宮本卓也(24)が2回目の警告で退場したのが響いた。これで、みちのくダービーの通算成績は仙台の12勝4敗13分けとなった。

 地鳴りのような歓声が響くスタジアムで、岡山だけが泣いていた。終了の笛が耳に入った瞬間、ピッチにへたり込み、両手で顔を覆う。辺り構わず号泣し「約束」を果たしてくれた仲間に感謝した。GK林らが抱きかかえ、あいさつに向かう。2失点の責任を一身に背負っていた、ベガルタ一のムードメーカーは、サポーターに土下座した。

 前半18分、山形MF秋葉の飛び出しに対応が遅れ目の前で先制点を献上。39分にも最終ラインを崩され、痛恨の追加点を許してしまった。ダービー独特のボルテージに「感情をコントロールできなくて、みんなに迷惑をかけた」とポツリ。岡山はハーフタイムの控室でも泣いていた。

 ここまで3戦連続完封劇の立役者は岡山-と誰もが分かっている。その男の涙を見た攻撃陣が「必ず取り返すから」と奮起した。後半6分、反撃の口火となる1点目を挙げたFW平瀬は「みんなで取り返そうという気持ちが出た」、2点目のMF梁も「悔し涙を見て絶対、勝ちたいと思った」と興奮気味に振り返る。そして同39分、途中出場のMF佐藤の移籍初ゴールでついに勝ち越し。「30(歳)ではありえない」と悔し泣きをからかいながら、岡山のミスを帳消しできた喜びに浸った。

 「2点ひっくり返さないと昇格できないぞ!」。ハーフタイムの手倉森監督のカツも効き、ダービー初戦で喫した2点差逆転負けの屈辱を、10年越しに晴らした。今季最多1万6931人の歓声にも後押しされ、4連勝で2位浮上。結束力の増したベガルタが、進撃を続ける。【山崎安昭】