川崎Fが「貝」になってしまった。京都戦(等々力)に向けた28日の練習は、先発メンバーが判明するのを避けるためか、恒例のセットプレーの練習を行わず、練習後はほとんどの選手がノーコメントを貫くという異様な雰囲気。アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の1次リーグは突破したが、前節26日は退場者を出して10人となった広島と引き分けるなど、リーグ戦は2勝3分け2敗と苦戦が続く。まだリーグ序盤戦。果たして「貝」になった効果は出るか?

 川崎市の麻生グラウンドで練習を終えた川崎Fの選手のほとんどが、足早にクラブハウスを後にした。やや伏し目がちに視線を落とし、「話せない」「分からない」「何も言えません」…。いつもは明るく、話し好きな選手らがとった行動は、明らかに「挙動不審」といえるものだった。

 練習から、いつもの試合前日とは雰囲気も練習内容も違っていた。翌日のメンバーに入る選手たちが行う、恒例のセットプレーの確認は行われなかった。いつもより約30分間短い、1時間半程度で練習が終わると、練習後はほとんど組んだことのない円陣で締めた。関塚監督は「セットプレーは連戦の疲労を考慮に入れ、やらなかった」と説明。選手が口を閉ざしたことについて聞かれると「何とも言えない」と、表情こそ柔らかかったが言葉は濁した。

 関係者の話を総合すると、選手は、ベンチ入りのメンバーなど一切の情報を漏らさないようにと、スタッフから言い渡されていたもようだ。DF井川は苦笑いを浮かべながら「ノーコメント」を連発し、「かん口令?」と聞かれたMF中村は「出てるのかな?」ととぼけた。

 こうした「厳戒態勢」の引き金となったのは、1-1の引き分けに終わったACL直後の26日の広島戦。首位浦和との勝ち点差は7に広がって、関塚監督は「上位とこれ以上離されると良くない」と危機感を募らせている。非公開練習を連発するなど、情報管理が徹底している今季の京都に対抗したのかもしれない。

 昨年4月にホームで対戦したときは0-1で敗れ、その直後に関塚監督が体調不良で休養を余儀なくされたという因縁もある。川崎Fはなりふり構わず勝ち点3を奪いにいく。【村上幸将】