<J1:千葉2-1広島>◇第11節◇9日◇フクアリ

 千葉FW巻誠一郎(28)が、得意の頭で決勝点を入れ、2-1の勝利に導いた。前半44分の左CK時に、自ら中央でスペースをつくり、フリーになってたたき込んだ。ホームのフクアリでの勝利は、昨季最終節でミラクル残留を決めた東京戦(12月6日)以来154日ぶり。巻の決勝点はJ通算50得点目という区切りのゴールだった。

 巻が、相手ペナルティーエリア中央で仁王立ちした。前半44分の左CK。マーカーの斜め後ろから1度は前に進んで相手に体を当て、ファーサイドに下がった。相手が慌てて下がってくる。そこで再び前へ。相手が戻りきれず、そのすきにフリーでヘッド。個人通算メモリアル50得点目は、チームを今季ホーム初勝利に導く決勝弾となった。

 「ピンポイントのボールがきたから得点できた。僕じゃないです。CKを蹴ってくれた中後のゴールです」と、淡々と振り返った。相手ゴールのど真ん中で、最も自分らしいゴールを決めたが、すべての称賛を駒大の後輩に譲った。

 今年は日本代表に呼ばれなくなり、チームも負けが込んだ。巻がハイボールに競り勝っても味方のフォローが少なく、チャンスをつぶすことが多かった。それでも孤立覚悟で、相手ゴール前の中央に立ち続けた。巻にはそこにこだわる理由がある。1月の結婚披露宴で、恩師である前日本代表監督のオシム氏からビデオレターが届いた。

 オシム氏

 今は代表でも自分のポジションがなく苦しいと思うが、巻にはマキというポジションがある。そこは巻しか務められないエリアだ。ゴール前でがむしゃらに動いてこそ、君は輝く。マキというポジションを確立すれば、代表でも欠かせない存在になる。

 めでたい結婚式場で、周囲を気にせず、ボロボロ泣いた。恩師の言葉は心の中に刻んでいる。苦しい時、行き詰まった時は、その言葉を思い出す。だからこそ、前で孤立した時も中盤に下がらず、相手ゴール近くで我慢を続けられた。「結果を残していけば、いつか岡田さんも振り向いてくれる」。オシム氏の言葉を胸に、巻が再び代表への階段を駆け上がる。【盧載鎭】