<J1:鹿島1-0大分>◇第21節◇15日◇カシマ

 鹿島DF伊野波雅彦(23)が1088日ぶりのゴールを決め、公式戦4戦未勝利と不振にあえいでいた王者を救った。前半32分にMF野沢拓也(28)の右からのFKをヘッドで鮮やかに合わせて決勝点を奪取。東京所属時の06年8月23日福岡戦以来、公式戦2点目となるゴールに加え、守っても相手のシュートを1本に抑える完封劇に貢献。「伏兵」が前人未到の3連覇を狙う鹿島を再加速させた。

 背番号19が空中に跳ね上がると、弓のように体をしならせ、ヘッドで決勝点を突き刺した。前半32分に野沢のFKから、膠着(こうちゃく)状態を打ち破る一撃。「昨日の練習で同じ形をやって首を振りすぎて外したので、今日はしっかり当てることを考えた」。伊野波は満足げな表情を浮かべた。

 1日の広島戦に敗れリーグ戦不敗記録が17で止まり、公式戦も4戦未勝利と一時の勢いが消えた王者を救う自身1088日ぶりの一撃だったが、余韻に浸ることなく、誰よりも早く自陣に戻った。「得点よりもチームの完封を評価してほしい。得点はうれしいけど、最近勝ってなかったし、勝ってから喜ぼうと思った」。と冷静に振り返った。

 身長179センチとセンターバックとしては恵まれない体格だからこそ、普段から創意工夫を繰り返す。見本となるのはインテルのコロンビア代表DFコルドバ。身長173センチで世界と渡り合う男だ。「身長は今から伸びない。小さいから、頭を使うようになった。コルドバをビデオで見て競り方や、体の当て方とかを研究している」と明かす。

 チーム屈指の身体能力をさらに上げる努力も欠かさない。今年から森永製菓のウイダーと個人契約を結び、トレーニングや栄養補給のアドバイスを受ける。「アジアや世界を考えるともっと体の幅を太くしたい」と考え、1カ月前から体幹強化に着手。「成果が出ている。今日も(大柄の)高松と当たっても全然負けなかった。どんどん鍛えていきたい」と言い切る。

 この日は大分のシュートを1本に抑える完封劇にも貢献。オリベイラ監督が「(GKの)曽ケ端が必要な場面もなかった」と絶賛した堅守を岩政とともに築いた。「今年の前半戦と比べると内容は悪かった。もっとやれることがある」と伊野波。「考える守備職人」が3連覇を目指す王者の屋台骨を支え続ける。【菅家大輔】