【グアム20日=永野高輔】ゴンの存在感は、別メニューでも衰えることはなかった。コンサドーレ札幌のグアムキャンプが始まった。新加入のFW中山雅史(42)は、右内転筋付着部炎のため別メニュー調整となったが、石崎信弘監督(51)は「いると空気が違う」と加入による効果を強調した。いるだけでチームに緊張感をもたらすゴンパワーを受け、10年札幌が本格スタートを切った。

 やっぱりゴンの存在は大きかった。グアムキャンプ初日、中山は練習開始の40分前にグラウンドに着き、入念なマッサージを終えグラウンドに歩み出た。開始直前、楽しげにボール回しなどをする他の選手を、まずじっくりと見渡す。数分間、チームのムードを推し量るように立っていた。言葉は発しなかったが、ただ立っているだけで、場の雰囲気が引き締まった。

 石崎監督のあいさつが終わると、すぐに別メニュー調整に入ったため、他の選手と行動をともにしたのは数分。それでも元日本代表のカリスマが、チームにいる意義は深かった。変化を最初に感じ取ったのは石崎監督だった。「ゴンちゃんがいるだけで全然、昨年と空気が違う。合流してくれるのが楽しみだよ」。7クラブで監督経験があり、中村憲ら多くの日本代表選手も育てた指揮官でさえ「日本のゴン」の秘めたる力に期待を寄せた。

 トレーナーとの会話以外、ほぼ無言で1人走り続ける大ベテラン。じっくりと体を動かす中山が、その風格だけでムードを変えていった。DF藤山は「別メニューなのに、いるだけで存在感がある。早く合流して、どんどんゲキを飛ばしてほしい」と早速、オーラを感じ取っていた。

 クラブが期待していた「メンタルトレーナー」としての効果が早くも発揮され始めている。昨オフ、チームの精神的若さを解消するため専門のメンタルトレーナー招聘(しょうへい)プランもあったが、ゴン獲得で方針転換した。中山加入なら戦力兼、精神的操縦役も担えると獲得に動いた。その答えは、キャンプ初日でいきなり表れた。

 19日のJリーグ理事会で、今季J2のベンチ枠が5から7に増えることが決まったが、石崎監督は「ベンチが1人でもゴンちゃんじゃろ」と絶大な信頼を置いている。存在だけでムードを変えられる男。中山雅史は、ただのサッカー選手じゃない。【永野高輔】