<J1:浦和1-0東京>◇第2節◇14日◇埼玉

 浦和FW田中達也(27)が、6月開幕のW杯日本代表候補に急浮上した。ホーム開幕戦で今季初めて先発出場。得点こそなかったが、ポスト直撃のシュートを放つなどスピードを生かしたプレーで今季初勝利に貢献。視察に訪れた日本代表の岡田監督や原強化担当技術委員長も高評価し、相次ぐ故障で遠のいていた代表復帰への道が開いた。東京FW平山相太(24)は2試合連続ゴールを逃し、「御前試合」は明暗が分かれた。

 頭で考えるよりも先に、168センチの体が弾んだ。前半38分、味方が得たFKのチャンス。MF柏木のキックがゴール左ポストにはね返ると、田中はこぼれ球を目がけて空中に飛び上がって、右足で蹴り込んだ。その間、わずか1秒足らず。シュートは無情にも右ポストを直撃したが、ピッチ上に大の字になりながらも「もう少し、足が長かったらな」と苦笑いがこぼれるほど、全力プレーの充実感をかみしめていた。

 W杯イヤーの今季、リーグ戦2試合目での初スタメン。途中出場した6日の開幕鹿島戦(カシマ)を落としていただけに、燃えた。前半34分には、MF阿部の自陣からのロングパスに、相手DF2人を引き連れながら前線のスペースへ駆け込んでシュート。「攻撃だけじゃなく、しっかり前からボールを奪いに行く。そこからの攻撃」と中央、サイドとめまぐるしくポジションを変えながら、攻守の素早い切り替えを実践した。鹿島戦に続いて直接視察した岡田代表監督が「(状態は)悪くない」と話せば、日本協会の原強化担当技術委員長も「これからさらにコンディションがよくなる」と好印象を口にした。

 昨季は、年明けから日本代表戦4試合に先発して1得点。エース候補として期待されたが、4月以降は左太ももや腰の痛みに苦しんだ。3月28日のW杯最終予選バーレーン戦を最後に代表に呼ばれていない。今季はオーバーペースの調整を避けるため、オフの自主トレを例年より控え、家族サービスにあてた。浦和フィンケ監督も「達也にとって、W杯を控えた大事な年」と体調を考慮した練習メニューで後押ししている。

 MF柏木やサヌら新戦力の加入で、浦和でのポジション争いもし烈だが、田中は「自分自身との闘い。ケガなくやれれば、試合に出られると思う。(代表復帰は)まず、チームでレギュラーとしていいプレーをし続けること」とW杯への夢は、あきらめていない。ワンダーボーイの挑戦が、幕を開けた。【山下健二郎】