11日に開幕する東北社会人リーグ1部で、グルージャ盛岡(岩手)が4連覇とJFL昇格を狙う。専用グラウンドを持たず、毎年多くの選手が入れ替わるなど、多くの困難を抱えながら、就任5年目の吉田暢(とおる)監督(44)は、冬場の徹底した走り込みでイレブンを鍛えてきた。同監督は「岩手のみなさんも期待しているし、今年こその思いはある」と悲願のJFL昇格に向け、意気込んでいた。

 「みちのく最強の放浪軍団」から夢のJFLへ-。グルージャ盛岡はリーグ3連覇中の強豪ながら、専用グラウンドを持っていない。市内の体育館や大学の陸上トラックなど、各地を転々としながらの練習。さらに選手は1人1人違う仕事を抱えており、全員そろうことは難しい。サッカーのできる環境すらままならない状況。今冬は悪天候続きで、ピッチ全体を使用しての練習はわずかに1日だった。

 悩みは尽きない。毎年、約10人の選手が入れ替わるため、その都度、「一」からのスタート。チームの熟練度が上がらず、歯がゆい思いもしてきた。吉田監督も「言い訳したくないが、正直厳しい」と言いながらも、“満身創痍(そうい)”で東北王者を守り抜いてきた。

 その要因は「不変の指導法」。環境や選手が変わっても、基礎固めは怠らなかった。体育館や陸上トラックを2時間近く走るという地味なトレーニングでまず、シーズンを通して戦える体力養成に努めた。不利な状況でもこの基本は貫いてきた。

 今年はチーム団結への工夫もこらした。同監督の提言で3、4月は仕事時間を合わせ、全選手そろっての練習を組んだ。「やっぱりバラバラでやるのとは気分が違う」(吉田監督)。変化はムードの変化に表れた。時間帯を午前と午後に分けていたころに比べ、大きな声が出るようになり、雰囲気はさらに明るくなった。

 11日のリーグ開幕を前に「うちよりも、現状で強いところはあると思うが何とか上を目指したい」と同監督。4連覇とJFL昇格。いばらの道を乗り越えてつかみ取るからこそ、最高の喜びとなる。【湯浅知彦】