<J1:清水5-1仙台>◇第6節◇11日◇アウスタ

 清水が強い !!

 小野がすごい!!

 清水が前節鹿島を破った仙台をホーム(アウスタ)に迎え、5得点を奪って大勝。開幕から6戦無敗(4勝2分け)で、前節からの首位をキープした。チームの好調を支えているのは今季、ブンデスリーガのボーフムから加入したMF小野伸二(30)だ。周りを「使う」のではなく「生かす」プレーを真骨頂とする“新司令塔”がJリーグのピッチで輝きを放っている。

 「オノ・シンジ」のコールが何度もスタジアムにこだました。新天地で6戦目となった小野は、この日もゴールとアシストはなかった。「兵働とどっちが先にゴールを取れるか勝負してるんだよね。おれも点を取らなきゃ」と、ほんの少しだけ気にしたが「結果的にチームが勝ったから、どうこうではない」と、何よりもチームの勝利を喜んだ。

 公式記録には残らない「小野効果」は確実に表れている。1点をリードした前半45分。ゴール前に攻め上がった小野は、シュートモーションに入りかけた体をスッと引いた。歩数にして2歩の小さなスペースに後方からMF本田が走り込み、ゴールネットに蹴り込んだ。「ゴールを見る余裕はなかった。ノリで打っちゃいました」と話す、MF本田を「生かす」小さな“アシスト”で大きな追加点を演出した。

 多彩な得点源も司令塔の小野のプレースタイルを象徴している。チームは開幕からの6戦でリーグトップ12得点を挙げ、日本代表FW岡崎の3得点を筆頭に、9選手がゴールをマーク。「どの選手もコンディションがいいし、清水にはいい選手がたくさんいる」と、チームメートへの信頼を強調した。

 だからこそ、特別扱いを嫌い、ハードワークも怠らない。小野の足元にボールがとどまる時間は短い。広い視野と素早い判断力で前線へのボールのつなぎ役に徹している。前々節の川崎F戦でMF稲本、前節の横浜戦でMF中村との「欧州復帰組対決」でも、運動量の差は歴然で、新天地への順応度合いも圧勝だった。

 この日、視察に訪れた日本協会の原博実強化担当技術委員長も「客観的に見ていいサッカーをしているし、小野のリズムがチームに伝染して、みんなの持ち味が出ている。気持ち良さそうにやってる」と絶賛。それでも小野は「ぼくは代表のためにやっているわけじゃない。エスパルスのためにやっている」と、チーム愛に徹した。サムライブルーではなく、オレンジ色のユニホームに身を包んだ「天才」が確かに清水の快進撃を支えている。【為田聡史】