サッカーの聖地が、7年ぶり復活に向けて動きだした。東京電力が福島第1原発事故の対応拠点としている「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)に関して、本来のサッカー用トレーニング施設として2018年をめどに使用を再開する方向で関係者と調整に入ったことが25日、分かった。日本サッカー協会(JFA)や地元自治体と協力し、20年の東京五輪で各国代表の練習拠点にすることを目指している。

 Jヴィレッジは福島第1原発から約20キロと近いため、事故後は関係車両の駐車場、資材置き場、作業員らの仮設宿舎などが並んでいる。しかし東電は、作業員関連の一部業務を、Jヴィレッジから福島第1原発の正門脇にできた施設に移すなど、機能を縮小している。今後は施設の除染やグラウンド整備などを進め、18年にはサッカー施設として再び使えるようにする。見直し作業中の東電の総合特別事業計画(再建計画)に盛り込む見通しだ。

 東電幹部は「(東京五輪が開かれる)7年後に向けて除染作業などを進める1つの目標となる」と話した。東電広報は「Jヴィレッジをサッカー施設として戻すことは、我々の業務の一部。周辺自治体とサッカー協会、施設の関係者と相談している」と明かした。Jヴィレッジの11年3月以来の復活で、福島県の沿岸被災地の復興を進める姿勢を示す狙いもある。

 Jヴィレッジは日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンターとして、97年に創設。天然芝10面、人工芝1面、5000人収容のスタジアムなどを備えるが、すべて事故対応に使われてきた。天然芝10面のうち、5面は線量検査場、3面は駐車場、1面は下水処理施設、1面は予備スペース。しかし線量検査場の5面は、その役割を6月末に終え、現在は機材が置いてあるだけだという。

 Jヴィレッジの運営担当は「施設内の除染が済まないと、先のことは考えられない。荒れ地から天然芝に戻すのも、数年はかかる。でも、18年再開という目安は、妥当な見方。具体的な再開計画はないが、実現したい」と力を込めた。

 ◆Jヴィレッジ

 1997年にオープンした日本サッカー界初のナショナルトレーニングセンター。約50ヘクタールの敷地内に12面のグラウンドや屋根付き練習場、宿泊施設を備える。東京電力が福島第1原発の増設計画に伴い、地域振興として福島県に寄贈した。元イングランド代表のボビー・チャールトン氏が命名。土地の大部分は同県楢葉町と広野町が所有し、日本サッカー協会などが関わる運営会社「日本フットボールヴィレッジ」が実務を担っている。原発事故後は、東電の要請で対応拠点として使われてきた。