<J2:札幌2-1岡山>◇第14節◇29日◇札幌厚別

 チアゴが“エアアシスト”で勝利を演出した。J2札幌が岡山を下し、ホーム3連勝を飾った。1-1の後半38分、DFながら初めてFW選手登録で途中出場したチアゴ(27)が、ヘディングで競り合い相手オウンゴールを誘発。公式記録には残らない“隠れ好プレー”で決勝点を呼び込んだ。チームは勝ち点を10に伸ばし、17位から一気に11位に浮上した。

 不細工ながら価値ある決勝点だった。後半38分、札幌DF岩沼の左クロスに、チアゴがゴール前で競り合った。一直線に体を伸ばす独特のヘディングが思わぬアクシデントを誘発した。頭をかすめたボールはコースが変わり、背後にいた岡山DF近藤の膝付近に当たった。さらにコースが変わったボールはゆっくり弧を描いて、GK真子が横っ跳びしても届かない、ゴール左隅に吸い込まれた。

 「少しでも触れば何かあると思ってた。とにかく入って良かったよ」。得点が決まった直後は右手でガッツポーズし、人さし指を天に突き上げた。背後で起こった“事件”を理解できず、自分のゴールと勘違い。だが公式記録上は岩沼の左クロスから相手DFのオウンゴール。ファンの記憶にしか残らない“隠れアシスト”だったが、石崎監督も「課題もあったが、あのシーンはオウンゴールにつながり、前線で使った効果が出た」と喜んだ。

 試合前にクラブスタッフの粋な計らいがあった。今季からセンターバック要員として新加入も出番は常に前線での途中出場。そんなチーム事情もあり斉藤マネジャーの発案でメンバー表の表記を本来の「DF」から初めて「FW」に変えてみた。控え選手のためポジション表記に規定はない。「何とかチアゴに得点してもらいたくて」。スタッフのささやかな願いが“ゴール”につながった。

 本職外のポジションも、腐らず練習を続ける明るいブラジル人。「出る場所はどこでもいいんだ。(勝ち点)3ポイントが大事。チームの勝ちが第一なんだ」と前向きに話す。自家製のホットドッグを振る舞うのが大好きで、26日には午後10時前に鈴木通訳に「食べに来ないか」と誘いの電話をかけた。さすがに同通訳も「もう夕飯を食べていたので断りました」と苦笑い。喜びは仲間と分かち合わないと気が済まない。きずなを大切にする巨漢“DFW”の奮闘が貴重な白星につながった。【永野高輔】