<J1:横浜1-2浦和>◇第30節◇22日◇日産ス

 試合2日前の監督交代劇が“特効薬”になった。浦和がリーグ戦9試合ぶりの勝利を手に入れた。アウェーで横浜に2-1で今季リーグ戦初の逆転勝ち。8月14日新潟戦(3-2)以来の今季7勝目で、暫定ながら降格圏を脱した。就任3日目の堀孝史新監督(44)が採用した4-1-4-1の“堀システム”が機能し、試合開始早々に先制を許しながらも後半に2ゴール。J1残留に向けて再スタートを切った。

 試合後の第一声は、「ありがとう」だった。2-1の逆転勝利を収めた後、堀監督は選手に感謝の気持ちを伝えた。2日前にユース監督から就任したばかり。試合前のアップの際には、真っ先にゴール裏のスタンドに向かうと、一礼。試合前のミーティングでは、MF山田直が「ユースのときもあんな表情は見たことがなかった」と話すほど緊張感が漂っていた。ミーティング終了間際にMF柏木が「監督、表情が硬いですよ」と明るく声を掛け、一気に場が和んだ。

 執念が逆転勝利を呼び込んだ。1点を追う後半5分、山田直がペナルティーエリア内で倒されPKを獲得。MF梅崎ら5人が集まり相談した結果、ファウルを受けた山田直がキッカーになった。相手GKにはじかれたが、こぼれ球をFW原口が左足で押し込んだ。今季9点目を挙げた原口は「直輝が外しそうだなと思ったので」とニヤリ。同16分には梅崎が決勝弾を決め、守備陣は後半だけで20ものセットプレーをしのいだ。

 堀監督は、短い準備期間で戦闘態勢を整えた。システムをペトロビッチ前監督時代から変え、4-1-4-1へ。前線の攻撃陣には自由が与えられ、各自の判断で流動的にポジションを取った。柏木は「のびのびできているのかな、と思う。新しいレッズスタイルを作れるようにしたい」。山田直も「監督からミスしてもいいから好きなことをやれと言われて、のびのびできた」と満足げに話した。

 J1残留に向けてのいばらの道はまだ続く。初采配での初勝利にも堀監督に笑顔はなく、「残りリーグ5試合のうち1つが取れた。あと4つがんばっていかないといけない」と冷静に話した。試合後には涙を見せた原口も「こういうゲームを続けていく」ときっぱり。特効薬を、上昇への薬にする。【保坂恭子】