浦和が28日、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)1次リーグ最終戦のムアントン戦(5月1日)へ向け、タイへ出発した。アウェー戦ながら、タイ・チェンマイの子供たちを招待。決勝トーナメント進出のためには、最終戦に勝って、同時開催の広州恒大の勝利が条件になる。簡単ではないが、サッカー教室開催などで親交ある子供たちの前で、最後まで戦い抜く。

 勝利のみが求められる一戦へ向け浦和が、タイへ旅立った。午後6時から軽めの練習を終えると、そのまま羽田空港へ移動した。リーグ戦で2連敗を喫したが、可能性が残るACLへ向け下を向く暇はない。

 最後まで戦う姿を見せなければならない理由がある。バンコクから約700キロ離れた、チェンマイ市郊外の「ロムサイFC」の子供たち約30人が、浦和サポーターとして試合を観戦する。同クラブがあるバーンロムサイでは、施設でHIV感染孤児が暮らす。周囲の地域からは、差別同然の扱いを受け、周囲との交流は断たれていた。だが08年に初めて、浦和が普及活動のサッカー教室「ハートフルサッカー」を行ったことを契機に、近隣地域を巻き込んだ交流が始まった。回を重ねるごとにHIV感染者への差別や偏見も大きく減った。交流が増え、現地で去年設立されたのが「ロムサイFC」だ。

 浦和は今回、日程の都合上、チェンマイで子供たちを指導できないため、試合に招待することを決めた。ACLに挑む選手、スタッフ以外に、ハートフルの落合弘キャプテンを含めた計5人のコーチがタイへ向かう。試合当日の午前中、スタッフ5人と親睦を図り、ムアントン戦を観戦する。落合キャプテンは「赤いユニホームを着て応援してくれたらいいけど、ムアントンの応援をしてくれても構わないよ。初めてプロの試合を見て、サッカーがもっと好きになってくれればそれでいい」と言う。

 HIVに母子感染した子は、毎日12時間ごとに薬を飲み続けなければならない。ロムサイFCの子には感染者と非感染者がいるが、自然と同じペットボトルで給水するなど偏見はなくなった。MF柏木は「いい機会だし、プロとしてのプレーを見せて、結果を出したい」と話す。1次L突破へ、勝ち点3と、広州恒大-全北現代戦で広州が勝つことが条件になる。諦めない姿を見せるという役割を担い、ムアントン戦へ臨む。【高橋悟史】