<J1:鹿島2-1川崎F>◇第32節◇22日◇カシマ

 3位鹿島が大逆転Vの再現に望みをつないだ。5位川崎Fを下してロッカールームに戻り、首位浦和との勝ち点差が4に詰まったことを知る。一瞬沸いたが、通算16冠王者はすぐ切り替えた。「次も、その次も勝つだけ」。残り2戦で4差は、最大11差をひっくり返した奇跡の07年と同じだ。

 当時を知る選手は5人だけ。その1人、MF遠藤康(26)が先制点を決めた。前半45分、ゴール正面で縦パスを受け、トラップでマークを外すと利き足の左を振る。ゴール左上を射抜くと「毎日何時間も、立ってるのがつらくなるほど練習してきた形だから」。自身初2ケタの今季10点目を、ジーコ魂の1つ「誠実」な練習で奪った。

 前夜は小笠原主将が急性胃腸炎になった。欠場も考えたが、志願の先発出場。後半14分に退くまで中盤で走り続けた姿に、トニーニョ・セレーゾ監督(59)は「出場が難しい状態でもチームプレーに徹し、責任感で走った。これが鹿島の伝統だ」と称賛した。

 3週間の中断期間中、砂場で酸欠になるまで走り込むなど名門の練習量は衰えない。07年再現へ、強化責任者19年目の鈴木常務は「あの時も勝ち続けて上位に重圧をかけた。勝者のメンタリティーが当時を知らない選手に浸透してきた」。奇跡を知る鹿島の猛追ほど、怖いものはない。【木下淳】