<J1:G大阪3-1神戸>◇第33節◇29日◇万博

 G大阪が、05年以来9年ぶりの優勝に逆王手をかけた。エースFW宇佐美貴史(22)が神戸戦で2ゴール1アシストと全3得点に絡み、勝利に貢献。前節まで首位の浦和は10人の鳥栖に後半ロスタイムに追い付かれ、引き分け。両チームが勝ち点62で並んだが、得失点差で7上回るG大阪が今季初めて首位に立った。12月6日の今季最終戦ではJ2降格が決定している徳島と対戦。00年鹿島以来Jリーグ2クラブ目の3冠が、現実味を帯びてきた。

 試合終盤、スタンドから「浦和、同点!」とG大阪の首位浮上を告げるサポーターの声が響いた。青く染まった人波はV王手を確信し、どっと沸いた。

 途中交代したFW宇佐美は試合終了直後、いち早くピッチに駆け寄った。両手の人さし指を立てて表した浦和のスコア「1-1」を仲間に伝えたかったからだ。「勝ったけど(順位は)どうか、と思っているでしょうから。僕らはリアルタイムで(他会場結果を)見ていたんで。なるべく早くというか、やじ馬みたいな気持ちで行きました」。勝利に貢献したエースは、いたずらっぽく笑った。

 宇佐美はリーグ8試合ぶりとなる2ゴールと1アシストで全3得点に絡んだ。「(ゴールの)コースが見えた」とイメージ通りだった。前半37分、右サイドからのパスを、タイミングをずらしてゴール右側へ流し打った。2点目も「(相手の動きが)見えたので、そこに切り込んだ」と得点シーンを思い返した。

 “神戸キラー”の異名に恥じない仕事ぶりだ。神戸戦では、プロ入り後全試合で得点しており、これで8戦11発。相性の良さに「不思議な縁を感じる。さすがに今日こそ止まるやろ、と正直思ってたんですけど。天皇杯(26日準決勝)で2本取ったので、点取れる予兆は出てたのかな、と」と首をすくめた。来季続投が確実な長谷川健太監督(49)は「今日はよく走ってくれた。結果も出たし最高のパフォーマンスを出してくれた」とエースを高く評価した。

 次節徳島戦で勝利すれば、浦和の結果次第で05年以来9季ぶり優勝が決まる。その先には、00年度鹿島以来のJリーグ2クラブ目の3冠も見えてくる。

 長谷川監督は「簡単な試合は1試合もない。最高の準備をして、もう1試合力を合わせていい形で終わりたい」。宇佐美も「(自信は)あります」とVゴールを予告した。2冠、その先の3冠へ、G大阪が突き進む。【鈴木絢子】

 ▼史上最大の逆転優勝に王手

 G大阪が残り1節で今季初めて首位に浮上。5月17日の第14節時点で勝ち点15の16位。当時首位の浦和(勝ち点29)との勝ち点差は14もあった。このまま優勝を決めると、05年のG大阪(8、10、11節時)と昨年の広島(1試合未消化の5月6日の10節時)が記録した12差を上回る「史上最大の逆転優勝」となる。

 ▼首位と2位が同勝ち点で最終節

 現行の1シーズン制となった05年以降、今季のように首位と2位が同勝ち点で最終節を迎えるケースは初めて。優勝決定が最終節に持ち越されたのは2年連続8度目で、過去7度のうち、前節首位のチームがそのまま逃げ切ったケースが4度、逆転が3度。

 ◆優勝の行方

 最終節を残して優勝の可能性は、勝ち点62の1位G大阪、同じく62の2位浦和、60の3位鹿島の3チームに絞られた。12月6日の最終節はG大阪が徳島、浦和が名古屋、鹿島は鳥栖と対戦。G大阪と浦和は勝ち点で並ぶが、得失点差はG大阪がプラス28、浦和がプラス21で7点差もある。その上、G大阪の次節の相手はJ2降格が確定している最下位徳島。G大阪が優位な状況だ。仮にG大阪が徳島に最小得点差となる1-0で勝った場合、浦和が逆転するにはJ1新記録となる9-0の9点差勝利が必要となる。