<欧州選手権展望:スペイン-フランス>◇準々決勝◇23日◇ウクライナ・ドネツク

 伝統国同士の対戦だが、フランスの方に不安材料が多い。

 フランスは不動のセンターバックであるメクセスが出場停止。DFコシエルニーが代役とみられるが、経験値が落ちるのは明らかだ。スペイン相手に中盤の守備、ここまで無得点のFWベンゼマの奮起がなくては苦しみそうだ。

 また、1次リーグ最終戦でスウェーデンに敗れ、「内紛」が取りざたされている。直後のロッカー室でブラン監督とMFベンアルファがその態度や選手起用で、MFディアラとMFナスリが中盤の守備を巡って衝突したという。さらにナスリは右ひざを痛めている上、ベンゼマとの連係がうまくいっていないとして、スペイン戦での先発が疑問視されている。MFリベリもかかとを痛めて別メニューだったが、出場は問題ないとされている。

 一方で、心強いデータは相性だ。過去、両チームの対戦は30回あってフランスの11勝6分け13敗だが、負けたのはすべて親善試合で、公式戦は5勝1分けだ。最後の公式戦は06年W杯決勝トーナメント1回戦で、3-1で勝っている。選手の間では「スペインよりイタリアとの対戦の方が嫌だった」という声も。06年W杯決勝でPK戦負け、08年本大会1次リーグで0-2で敗れたイタリアに苦手意識があったようだ。試合会場が初戦、2戦目と同じで、移動が少なかったことは好材料とされている。

 スペインはこれまで通り、MFイニエスタ中心に攻撃的に臨む。1次リーグ最終戦ではクロアチア相手に競り勝ったものの、内容的には苦しんだ。2試合先発のFWフェルナンドトレスが、この試合では不発だったため、再び前線にMFを並べる「ゼロトップ布陣」の有効性について、論議が噴出している。デルボスケ監督はこうした外野の声に「期待が高すぎるゆえの論争」と動揺はなさそう。イニエスタも「批判は勝者への敬意。楽しまなくては」と話し、MFシャビは「(故障で不在の)プジョルとビリャのためにも勝ちたい」と、こちらはチームの和が保たれているようだ。

 この試合の勝者は、準決勝でポルトガルと対戦する。