日本代表のドルトムントMF香川真司(26)が、再起への足がかりとなる先制アシストを決めた。前半15分、MFロイスへのスルーパスでお膳立てすると、後半5分には香川が起点となった4点目を演出。チームは昨季3位のボルシアMGに圧勝し、最高のスタートダッシュを切った。

 ピッチの上で暴れるようなボールを、香川の右足が吸収した。DFフンメルスからの速い縦パス。中央で待ち受けた香川が、左を走るロイスへ広角に出した。柔らかくピッチを滑るような軌道に変わったボールは、ロイスの先制点へと生まれ変わった。今季開幕からわずか15分。香川のドルトムント4シーズン目の幕開けだった。

 周囲だけでなく、香川自身の予想に反して、先発に名を連ねた。「試合前までは『おそらくベンチかな?』という気配があった。トゥヘル監督もコーチも『練習がよかった』と言っていた。最高の集中力と、最高の準備をして迎えたんで、すごく怖さもあったし、緊張感もすごくあった…。まあ、疲れましたね」。後半5分には、右サイドの裏のスペースを走るロイスへ浮き球。FWムヒタリャンの4点目の起点にもなった。4-0の大勝は、香川の思い描いていた通りのスタートダッシュがかなった。

 プレミアのマンチェスターUから電撃復帰した昨季は、とにかく苦しんだ。チームが勝てず一時最下位にまで沈んだ。「去年は1試合も楽な試合がなかった。1年目のホームは勝てるイメージしかなかったけど、去年は勝てるイメージさえ持てなかった」。だから「プロセス(過程)が大事。うまくいくことが偶然ではいけない。必然にするためにやらないといけない」という。

 この試合でシュートにつながったラストパス数は、4本で両チーム最多。ゴールへの過程に関わり続けた。その裏には後半40分に退きながら、走行距離11キロで両チーム3位という運動量が支えた。後半21分にはGKとの1対1という決定機を外し、ゴールは奪えなかったが「いいスタートを切れれば、グンッといく気がする。足元見つめて全員でやれれば、結果を残せる」。ただ勢いだけの圧勝ではない。勝利へのプロセスに、香川がいた。【鈴木智貴通信員】