プレーバック日刊スポーツ! 過去の12月20日付紙面を振り返ります。2010年は、やっぱり長友!!1万人が「ユウトコール」5戦ぶり勝利でした。

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<セリエA:チェゼーナ1-0カリャリ>◇2010年12月18日◇チェゼーナ

 チェゼーナDF長友佑都(24)が、日本代表のザッケローニ監督が視察する前で「W杯イヤー」を白星で締めくくった。ホームのカリャリ戦に右サイドバックでフル出場。果敢なオーバーラップと激しい守備で「ユウトコール」を巻き起こすなど、チームの1-0勝利に貢献した。アジア杯(1月7~29日、カタール)招集について長友は「分からない」と言葉を濁したが、ザッケローニ監督は「23人のリストはもう決めている」と意味深長な発言。日本代表にとっても欠かせぬ存在となっているようだ。

 「ユウト、ユウト、ユウト」。前半31分、長友コールが起きた。鋭い出足で駆け上がり、はずむように相手2人をかわしてパス。スピーディーで華麗な動きに、ホームサポーターから自然と声が上がった。スタンドには日本代表ザッケローニ監督の姿もあった。気温マイナス7度と冷え込む中、アドレナリン全開だ。「ボールを持った時の歓声がすごいんでありがたい」。開幕から16試合フルタイム出場する鉄人への期待感は、誰よりも高かった。

 前半17分にヒメネスが挙げたゴールを守り切り、1-0の勝利。5試合ぶりの白星で年内最終戦を飾ると、ガッツポーズで大柄なGKアントニオーリにジャンプして抱きついた。長友は「今日はめちゃ勝ちたかった。本当にうれしい。勝つために上がるのもバランスを取ってという感じだったが、いいタイミングで上がれていたと思う」。勝利の美酒に酔うロッカールームは大歓声。「これから休みになるし、ボン・ナターレ(メリークリスマス)と大きな声で叫んでいた」。長友の勇姿はサポーターはもちろん、視察したザッケローニ監督への最高のクリスマスプレゼントだった。

 セリエAと日程が重なるアジア杯について、日本協会とクラブの綱引きは続く。長友は「分からない」と言葉を濁したが、ザッケローニ監督は「ミノッティ強化部長にあいさつしただけで、アジア杯について話していない」と煙幕を張りつつも「最終リストの23人はもう私の中で決めている」と断言。今回のアジア杯はシード権(3位以内)の獲得が大命題だけに、この日の視察で長友は不可欠な存在と再認識したようだ。

 南アフリカで躍動し、イタリアへの移籍を現実にした。長友にとって激動のW杯イヤーは、勝利とともに幕を閉じた。つかの間のオフは日本で過ごす。「久しぶりに焼き肉とかカレー、すしが食べたい」。1年間走り続けた男の表情は、どこまでも晴れやかだった。

※記録と表記は当時のもの