◆ヤングボーイズFW久保裕也(23)

 昨秋、日本のターニングポイントとなりそうな一戦があった。11月15日のW杯ロシア大会アジア最終予選サウジアラビア戦。10年の南アフリカ大会から不動の先発だったFW本田圭佑が外れ、当時22歳の久保が国際Aマッチ初スタメンを飾った。不運にも前半5分、相手DFと接触して右膝を負傷。痛みを隠して前半はプレーしたが「迷惑をかけられない」とハーフタイムに自ら交代を申し入れた。

 翌日の出国に足を引きずって現れ、11月20日のシオン戦で今季のスイスリーグ初欠場。開幕からの連続出場は14試合で途切れたが「海外組も含めたA代表は初めて。課題は見えたけど『もっとできる』とも思ったし、慣れない右サイドでもできるようにしたい」と目を輝かせた。受けた刺激を原動力に12月4日バーゼル戦での復帰を目指したものの、今度は試合2日前の練習中に再発してしまった。

 昨年は、同じ右膝の負傷でU-23(23歳以下)日本代表のトゥーロン国際(5月)を欠場し、完治後もクラブ事情でリオデジャネイロ五輪(8月)への出場を断念した。そして、約4年9カ月ぶりに復帰したA代表でも試練が訪れた。12月12日の16年最終戦を待つことなく、治療に専念するため同8日に早期帰国。今年1月3日に再出国するまで4週間、日本にいた。19歳だった13年夏に海を渡ってから「最も長い一時帰国になっちゃいました」。割り切って都内で診察を受け、右膝の内側靱帯(じんたい)の治療を開始。24日の23歳の誕生日はリハビリ先の京都で迎え、年末年始も実家のある山口市内で天然芝の練習場を借り、2勤1休ペースでトレーニングした。

 元日の初蹴りは、現在ドイツ5部クラブでプレーするFWの兄武大(たけひろ、25)と行い「今年は代表に入り続けて、初ゴールを含めて結果を出す」と新年の誓いを立てた。3日、スイスに飛び立つ前の空港で「ほぼ痛みはなくなりました。ボールも蹴れるようになったし、あとは対人だけ」と語った。穏やかな表情に、ひと安心した。14日から始まるチームのスペイン合宿にも問題なく合流できそうだ。

 厳冬のスイスの中断期間は長く、後半戦は2月5日シオン戦から再開される。リオへの道が断たれた後、すぐロシアへ切り替えた目的地。無念は前半戦の公式戦25戦12発で晴らした。リーグのレベル差はあれど、今季の海外組で最多だ。けが明けの後半戦も同様の成績を残せるか-。クラブのステップアップという野心もある17年を最高の1年にするため、まるまる力を蓄えられる今後の1カ月を無駄にできない。【木下淳】