カターニアの日本代表FW森本貴幸(23)が、11-12年の新シーズンからセリエAに昇格するノバラに移籍することが8日、分かった。クラブ間交渉が行われ、この日までに合意に達した。カターニアでは控えに甘んじ、昨年末には左ひざを手術。日本代表アルベルト・ザッケローニ監督(58)に強く期待されながら、アジア杯欠場を余儀なくされる不遇も味わった。高い評価を受ける新天地で巻き返しを狙う森本はこの日、イタリアに向けて日本を出発した。

 去就が注目されていた森本が、熱望していた今夏移籍を実現させた。7日にカターニアとノバラ両クラブが直接交渉を行い、移籍について合意に達した。カターニアのロモナコGMは「共同保有で話を進めている」と詳細を詰めている段階にあることを明かした。近日中に正式発表される。

 この日、成田空港からイタリアへ出発。一般的に、契約問題は成立間際が非常に重要で、選手の何げない発言が支障になることも多く、森本はそうした点を自覚し、無言のまま機上の人に。カターニアの住居はすでに引き払い、イタリア国内でメディカルチェックを受け、契約書にサインするタイミングを待つ。その後は17日からのキャンプに合流する予定だ。

 ノバラは昨季セリエBで3位となり、プレーオフの末、55季ぶりのセリエA昇格を決めた。セリエA定着を目指した補強として、森本獲得は攻撃陣強化の目玉だった。

 心が折れてもおかしくない状況だった。在籍5年目の昨季は、開幕戦に途中出場したが、その後ほとんど出番はなし。短い出場時間も、ディエゴ・シメオネ監督の方針で前線ではなく、右サイド起用が多かった。移籍直後の06年を除き、出場12試合はワーストでわずか1得点。リーグ戦終盤は連続してベンチ外の屈辱を味わった。昨年末には負傷した左ひざ半月板の手術を受けアジア杯を欠場。攻撃の軸として期待を寄せていた日本代表ザッケローニ監督を残念がらせた。

 今年4月、契約をあと1年残していたが「カターニアに残ることは絶対にない」と発言しGMの怒りを買った。心身ともに厳しい環境でのシーズンだった。

 移籍先にはバリ、サンプドリア、ローマ、パルマ、トリノなどセリエA各クラブが取りざたされた。最終的にはキエボなどに加え、ポルトガルやスペインのクラブからもオファーが届いたが、ノバラの強化部門責任者の「潜在能力が非常に高い」との高評価が、決断の決め手になった。

 森本は常々「守備の国イタリアでFWとして勝負することが、僕にとってサッカーを極めることになる」と、セリエAでの活躍を信条としてきた。今の森本には、出場機会こそが何よりの活力になる。9月に2014年ブラジルW杯アジア予選を控えるザックジャパンにとり、森本の新天地選択は何よりの朗報になる。