<中国スーパーリーグ:遼寧宏運4ー0杭州緑城>◇23日◇北京

 前日本代表監督の岡田武史氏(56)が率いる中国スーパーリーグ杭州緑城が、尖閣問題による反日の機運が高まる中国情勢のあおりを受け、ドタバタに巻き込まれた。22日にアウェーの瀋陽で行われる予定だった遼寧宏運戦が急きょ1日延期され、23日に中立地の北京で行われたものの、完敗を喫した。

 15日のホーム山東魯能戦がリーグ側の判断で突然延期され、10月3日開催となったことに続くハプニングだ。現地報道によると、今回は瀋陽の組織委員会がリーグ側に試合の1日延期と開催地変更を打診。理由は山東戦と同じで、日本人の岡田監督が指揮を執る杭州緑城の試合で不測の事態を考慮したものとみられる。実際、瀋陽では18日に8000人規模の反日デモが発生。日本総領事館の窓ガラスが割られており、安全面が懸念されていた。結局、試合はこの日、北京郊外の香河国家訓練基地で、中国スーパーリーグ史上初の「無観客試合」で行われた。

 チームも突然の開催地変更に大慌てとなった。22日の試合を想定して21日午前に杭州市郊外の練習場で調整を行い、午後に杭州空港に向かう途中に1日延期と開催地変更が通達された。仕方なく練習場に戻り、22日午前に再度調整練習を実施。午後に北京への移動を開始した。だが、杭州~北京の飛行機が1時間近く遅れた上に、北京市内の大渋滞に巻き込まれ、夕方に会場近くに着く予定が、実際の到着は午後8時にずれ込んだ。日程変更のストレスに移動疲れまで重なった。

 この日は合宿所のグラウンドのような環境で、周囲にいるのは関係者だけ。指示の声が響き渡る中での惨敗だった。シーズン終盤に差し掛かり、下位に低迷する苦戦を強いられる上に反日感情の高まりという思わぬ「壁」も立ちふさがる。

 それでも岡田監督は試合後の会見で毅然(きぜん)と言った。「私はできることをやる。中国人も日本人も、サッカー界としてともに団結すべきだ。私はサッカーに集中しているから、政治的要因などの重圧は考えたことはない」。就任時に「サッカーという草の根レベルで日中友好に貢献できたら」と話していた日本の名将は、どのような状況下でもピッチ内外で「結果」を追い求めていく。