セリエAの名門ACミランと交渉中の日本代表FW本田圭佑(27=CSKAモスクワ)が、近日中に移籍が正式決定する見通しであることが8日、明らかになった。今冬まで契約を残していることから、移籍金を巡り交渉は難航。しかしCSKA側が求める500万ユーロ(約6億5000万円)を、ACミラン側が用意したことが判明した。この日、本田は都内で日刊スポーツの独占取材に応じ「近いうちに白黒ハッキリする」と明言。数日中に開かれるトップ会談で合意すれば「ミラン本田」が誕生する。

 難航していた本田のACミラン入りが、いよいよ決まる。14日の親善試合ウルグアイ戦のメンバーが発表になったこの日は、雑音を避けるかのように、誰もいない都内の練習場を貸し切り自主トレを行った。炎天下で2時間。みっちりとトレーナーを付けて調整した。そして、長期化しているビッグクラブ移籍交渉について日刊スポーツの独占取材に応じた。

 本田

 今までも(ACミランと)交渉をしていることは認めてきましたし、その中でも大詰めを迎えようとしているのは事実です。(契約内容の)詳細はまとまりつつある。俺が聞いている情報では(CSKAが求める移籍金を)ミランはほぼ満たしている、と。近々(CSKAの)会長とガリアーニ(ミラン副会長)が会うので、そこで白黒ハッキリする。

 本田の契約は残り約5カ月。契約が切れる来年1月以降はフリー(移籍金ゼロ)で他クラブに移ることができるが、今夏移籍には違約金に当たる移籍金が発生する。それでも本田もミランも今夏移籍を希望している。それに対しCSKAは一貫して500万ユーロ(約6億5000万円)の移籍金を求めてきた。ミランは7月22日のモスクワでの初のクラブ間交渉で200万ユーロ(約2億6000万円)を提示。同24日に300万ユーロ(約3億9000万円)に増額し熱意を示した。それでも両者には大きな隔たりがあったが、この日までにミランがCSKAの希望を満たす額を用意したことが判明。数日中にミランのガリアーニ副会長とCSKAのギネル会長の事実上のトップ会談が実現する見込み。そこでクラブ合意に達すれば、正式発表となる。

 本田

 あとは(CSKAの)会長のさじ加減。年俸を削って移籍金に充てるという解決策もあるかもしれないが、俺は1円たりとも下げるつもりはない。個人の条件を変えてまで、というのは、ミランが本当に俺を欲しいのか…ということでもあるから。(今夏移籍の)個人条件もあと少し。もう、まとまるところまできている。

 今夏の移籍が実現した際に、ミランから受け取る年俸や諸条件も合意間近。移籍金もCSKAの要求をほぼ満たしている。あとはクラブ間合意後に、本田がミランと正式契約する運びとなる。ただ、昨年1月には同じセリエAのラツィオ移籍が移籍期間の最終日、土壇場で破談になった経緯がある。当時と同じでかたくなな態度を崩さないCSKAの承認がなければ、この夏の移籍は決まらない。最後まで予断を許さないのもまた事実だ。

 欧州内や日本でも本田の移籍を巡る報道は錯綜(さくそう)している。そんな中「移籍に関しては、俺が把握していることが真実」と、デリケートな時期にもかかわらず真相を明かした。待ちに待った「ミラン本田」。本田が、あの赤と黒の伝統あるシャツを身にまとう日は近い。

 ◆ACミラン

 1899年、イタリア・ミラノで創設。1986年に後に首相となるベルルスコーニ氏が買収。翌87年にファンバステンらを獲得、黄金期をつくる。98年から日本代表ザッケローニ監督も指揮を執り、リーグ優勝も経験。06年にはいわゆる「八百長騒動」で処分を受けたが、翌シーズンには欧州チャンピオンズリーグ(CL)優勝。昨季はリーグ3位。DFバレージ、マルディーニら多くのイタリア代表選手を輩出。フリット、ライカールト、ベッカム、ロナウド、カカら世界のビッグネームも所属した。過去リーグ優勝18回、欧州CL優勝7回。ユニホームは赤と黒の縦じまで「ロッソ・ネロ」と呼ばれる。本拠地はサンシーロ・スタジアム。<ミラン本田獲得の動き>

 ◆6月5日

 来年1月に契約の切れる本田獲得を狙う動きがあるとイタリア紙が報道。

 ◆7月4日

 イタリア紙が一斉に、本田がACミラン移籍で個人合意したと報じる。

 ◆同5日

 国内で自主トレ中の本田がミランについて「(移籍先の)候補であるのは確かやね。(代理人に)動いてもらっている」と初めて候補であることを認め、今夏の移籍に向けて代理人が動いていることも明かす。

 ◆同7日

 CSKAモスクワに合流するため成田空港発の航空機でロシアへ。

 ◆同8日

 ミランのガリアーニ副会長が本田について「(来年)1月に来ることができるよう強く願っている」と話したとイタリアのスポーツ専門テレビ局が報じた。

 ◆同19日

 日刊スポーツの取材に、移籍について「簡単に決まらないということは分かっている」。

 ◆同23日

 日刊スポーツの取材に本田が「CSKAが移籍金の額を下げない限り夏の移籍は実現しないと思う。俺が年俸を削ってまでということはない」。

 ◆同28日

 ロシアのタス通信がCSKAのギネル会長の「ガリアーニ氏は尊敬できる人物でミランはまじめなクラブだが、私は自分たちを無知だと思われることに嫌悪感を抱く」というコメントを伝えた。

 ◆8月1日

 本田が日刊スポーツなどの取材に「俺は足元を見られるような立場にはないということ。(今回の交渉で)誰がボスなのかといったら俺。他の人はそれを理解しないといけない」と激白。

 ◆同6日

 日本代表の活動に備え帰国。