志願の登場だった。日本代表FW香川真司(25=マンチェスターU)が、W杯が行われたブラジルから帰国後、初めて公の場に登場した。12日に川崎市内でファンイベントを開催。1次リーグ敗退という結果に終わり、イベント不参加も検討されたが、約3000人の前に姿を見せ、はい上がることを宣言した。近日中にもチームに合流し、マンUで新シーズンを迎える。

 笑って、走って、ボールを蹴った。重圧から解き放たれたように、香川は楽しんでいた。来場した約3000人の前で、開催したファンイベント。トークショーや、子どもたちとのサッカー教室に参加した。小学生を相手にしたミニゲームでは軽やかなステップから、ほれぼれするような巧みなドリブル突破を披露。歓声に包まれ笑みを絶やさなかったが、胸に大きな決意を刻み臨んでいた。

 「W杯でこういう結果に終わって、イベントやるのかどうか考えたが、中心選手として出させてもらっていた。自分の口から伝えることが大事だと。こういうイベントで子どもたちにすべてがうまくいくわけじゃなく、悔しい経験もするんだということ。そこからどうやって切り開いていけるのか、自分が証明したい」

 関係者によると、W杯前から予定されていたイベントだったが、未勝利での1次リーグ敗退という結果に終わり、一時は不参加の可能性もあったという。それでも、香川が志願した。主力選手の中では、W杯での結果を受けて、メディア露出を控え休養に努める選手が多い。ふがいない結果に、浮かれた姿を見せられない。中心選手であればあるほど、そんな配慮を見せるが、香川は公の場に現れた。

 まだ気持ちは、完全には切り替わっていない。それでも目を輝かせる子どもたちの姿を実際に見て、背中を押された。

 「整理はしっかりしたい。切り替えて次を迎えたい。子どもたちと交流して、これだけ応援してくれて、信じてくれていたんだと肌で感じた。『ここからはい上がって、新しいキャリアを積むんだ』という気持ちになれた」

 新シーズンでマンU3年目を迎える。近日中にもチームに合流して、北米で開催される国際親善大会「インターナショナル・チャンピオンズ杯」に出場する。W杯を一緒に戦った本田のミラン、長友のインテルミラノも参加する。長友との対決は実現濃厚で、勝ち上がれば本田のミランと当たる。

 悔しさにまみれたW杯と正面から向き合い、また1つ成長するために再スタートを切る。【栗田成芳】

 ◆日本代表主力選手のW杯後の動向

 帰国後、国内組はクラブに合流したが、オフ中の海外組は公の場に姿を見せた選手は少ない。ザッケローニ監督が、1日に母国イタリアへ帰国のため出発した際には、羽田空港に主将のMF長谷部とDF内田が見送りに姿を見せた。またDF吉田は6日に茨城県内でサッカー教室を開催するなど、複数回登場。FW大迫は鹿島の練習に参加し、DF長友やFW岡崎は自主トレを行っている。FW本田は帰国しないまま海外で休養と自主トレを行っている。