[ 2014年2月7日8時53分

 紙面から ]<連載:浅田真央

 悲願女王へのラストダンス第8回>

 トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を2年ぶりに成功させた13年2月の4大陸選手権。11日のエキシビションを前にして、浅田真央の心は高揚感でいっぱいだった。姉舞さんによれば、そんな時は「真央は気持ちが高まるとすぐに余計なことをしゃべる」。14日にバレンタインデーを控えたこの日、「どんな男性がタイプか」との質問に飛び出したのは…。

 「優しい人がいい。しっかりしている方がいいので、年上がいいですね。包んでくれる人…。35歳くらいまでなら。一緒にいて支えてほしい」。赤裸々に22歳の等身大の恋愛観を口にした。少し、恥ずかしそうに顔を赤らめながら。そんな競技以外のことをしゃべるのは近年は珍しかったが、もともとは天真らんまんさが人を引きつける陽気な性格。

 例えば、14歳の時。カナダで開催された世界ジュニア選手権の優勝直後、「優勝したらトイプードルを買ってもらえるので」と話していた。ところが、その直前に地元の街中のペットショップに「下見」に行ったところ、入店するなりくしゃみが止まらない。「真央は犬アレルギーなんだよね」と告白する姿に、周りは爆笑してしまったとか。それでも、帰国後には愛犬エアロを飼うことが決まり、大喜びしていたという。

 小学生のころは、ファストフード店で「真央は炭酸ダメなんだよね」とコーラを飲めないことを伝えた直後、手に携えてきたのはスプライト。「それも炭酸では…」ときょとんとする周りを前に、おいしそうに透明の液体を飲み干した。

 舞さんいわく「天然」な妹は、そんなつかみどころのない性格だった。バンクーバー五輪後に始まった2年以上のスランプ。その中で失われていった本性が、3回転半の2年ぶりの成功でようやく顔を出した。競技以外の面でも、ようやく長いトンネルを抜けたのが13年初春だった。

 そして3月、14歳の時にエアロのご褒美を決めたカナダで、今度は世界選手権が開かれた。(つづく)