[ 2014年1月28日10時36分

 紙面から ]ソチ五輪リュージュ代表の金山は、壮行会の出席者と応援の旗を広げる

 すべての期待を背負ってソチの舞台に立つ!

 リュージュ男子1人乗りソチ五輪代表の金山英勢(23=札幌学院大)の壮行会が27日、札幌市内で行われた。リュージュでは男女を通じ唯一、代表に選出された日本の第一人者。4月から勤務する札幌通運(本社・札幌)も最低でも4年後までの支援を約束。日本の伝統を守るためにも2月8、9日の本番で上位進出を目指す。

 壮行会には恩師や友人、競技の関係者ら約300人が集まり、4月から就職する札幌通運の下斗米寛泰社長(66)が「結果は気にしなくていい。4年後も含めて安心して競技ができる環境を提供します」と乾杯の音頭を取った。金山の信念「努力」の先に、次回五輪を意味する4年後までの大きな「支援」が待っていた。「結果を出して、期待に応えたい」と、競技で唯一人の代表選手が力を込めた。

 1人で競技の未来を背負う。4年前に日本オリンピック委員会から受けていたリュージュの支援は、大半が世界大会で実績のあるスケルトンに回された。昨年3月まではイタリア代表の遠征に1人で同行、見よう見まねで力を付けた。今季は自ら国際オリンピック委員会に奨学金を申請。ようやく国内コーチを同行できるようになり、W杯で結果を残し、代表をつかんだ。日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟の御園生哲理事は「日本のリュージュを救ってくれた」と、手放しで金山をたたえる。

 自身のW杯最高位は26位だが、競技の未来のために五輪でさらに上位をうかがう。五輪の同競技には72年札幌大会以来、過去11大会連続で道産子が出場を続けている。金山を含め道内選手は全員が札幌五輪の練習場として作られた札幌市藤野リュージュ競技場で育った。本来はコース1キロだが、40年以上が経過した今、施設の老朽化もあり700メートルしか滑れない。「1キロと700メートルではスピード感が違う。五輪で結果を出せば注目されますし、環境もよくなるはず」と言う。

 そして自分を認めてくれた就職先への恩義も忘れない。リュージュは1000分の1秒のスピードを争うため、「運送の質のアピールにもなるはず」と、自ら広報マンとして滑走し続ける決意を語る。3日のW杯で痛めた右手中指のケガも完治し、五輪には万全の状態で向かう。「大好きなリュージュの層を厚くしたい」。確固たる決意でソチのコースに身をゆだねる。【中島洋尚】

 ◆金山英勢(かなやま・ひでなり)1990年(平2)9月26日、札幌市生まれ。札幌手稲東小5年で競技を始める。札幌国際情報高-札幌学院大。中高時代はリュージュの他に陸上部にも所属。高2で8種競技、高3時にはやり投げで北海道大会に出場。リュージュでは09年に強化指定選手に初指定され、W杯に初出場。10年に全日本選手権を初制覇し、昨季まで3連覇。昨季の世界選手権は35位。W杯最高は26位。家族は母と弟。169センチ、78キロ。

 ◆リュージュ日本代表の五輪成績

 最高成績は同競技の日本代表が初出場した72年札幌大会の男子2人乗り(荒井理・小林政敏)の4位。1人乗りでは「りんごちゃん」と呼ばれて親しまれた同大会女子の大高優子(現姓小林)の5位。男子1人乗りの最高は98年長野大会で牛島茂昭が記録した16位。大高の娘で「りんごちゃん2世」の小林由美恵は、長野と02年ソルトレークシティーの2大会に出場し、ともに25位。10年バンクーバー大会まで11大会連続で道内出身者が代表になっている。