<アジア大会:陸上>◇第10日◇28日◇韓国・仁川

 完全復活への第1歩だ。女子100メートル決勝で福島千里(26=北海道ハイテクAC)が、11秒49で銀メダルを獲得した。2大会連続の最速女王の座は、わずか100分の1秒差で韋永麗(中国)に譲ったがレース後はうれし涙を浮かべた。

 誰より本人が復活を実感した。「55%悔しくて、45%は良かった」と切り出した福島は、言葉を重ねるごとに感極まった。「最後まで自分のレースが出来て、最後まで自分を信じ切れました。悪かったのはメダルの色だけ…」。そう言うと涙が頬を伝わった。

 09年以降の日本記録連発から世界陸上初の準決勝進出、そして2度目の五輪。この12年までは順風満帆だった。さらなる進化を目指した肉体改造。これが女王の成長を止めた。本来のしなやかな走りは影を潜め、もがき苦しんだこの2年。今季、オーストラリアでの初の単身合宿などを経て本来のフォームが戻った。

 自分の復活を、親友へのはなむけにしたかった。07年のハイテク入り以降、影に日なたに支えてくれた畑善子マネジャーが今大会を最後に、結婚のため退社。私生活でも常に一緒だった親友へささげる走りでもあった。