鉄人が帰ってくる。04年アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダルの室伏広治(41=ミズノ)が、日本選手権(6月、愛知)に出場する見通しとなった。24日、都内での日本陸連理事会後に意思を表明。4月の熊本地震を見て決意を固めた。出場すれば、14年の同選手権以来2年ぶり。昨季は試合に出場しておらず、強化委員会の推薦を受けて出場する。5大会連続の五輪出場に続く道のりを歩き出す。

 あの雄たけびが復活する。室伏が、日本選手権出場を表明した。「今、日本選手権に向けてエントリーの手続きを踏んでいるところ。全身の力でできるところまで。その気持ちが被災地に届けば、と思っています」と説明した。

 11年の東日本大震災では被災地のために投げた。「東北の子たちと約束して。年齢的にも厳しい状況だったが、それを乗り越えた経緯がある」。12年ロンドン五輪で銅メダル、日本選手権は14年に福島で20連覇。後輩の成長を期待して「役割を果たした」と、昨年は欠場。自ら、連覇に終止符を打った。最近は20年東京五輪組織委員会のスポーツディレクターを務めるなど多忙。それでも「熊本の震災を意識して」再びハンマーを握る。

 出場すれば、2年ぶりの試合になる。リオデジャネイロ五輪の参加標準記録(77メートル00)については「かなえばいいが、やってみないと分からない。年々難しくなってくる。『今日、頑張る』ということしか残されていない」と、まずは日本選手権に集中する考えだ。

 室伏は昨季の記録がないため、出場には強化委員会の推薦が必要になる。日本陸連の尾県専務理事は「本人が出るというなら(推薦は)もちろん」と断言。100回目の節目を迎える同選手権に、室伏が再び帰ってくる。【益田一弘】