五輪連続2冠(5000メートル&1万メートル)を狙うモハメド・ファラー(33)が、男子3000メートルに7分32秒62の英国新記録で優勝した。

 男子では3000メートル以外にも600メートル、1500メートル、3000メートル障害、走り高跳びの5種目、女子の棒高跳びを加えた6種目で今季世界最高記録が生まれた。

 ラスト勝負を最大の武器とするファラーだが、地元観衆の前で選択した戦法は独走だった。2000メートルでペースメーカーが外れると単独で、英国新記録を目指して残り1000メートルを力走。「ゴールしたときは破ることができたか、わかりませんでした」と振り返ったが、1982年から残っていた7分32秒79を0・17秒ときわどく更新した。

 だが、この日のタイムは世界歴代リストでは65位で、レベル的にはそれほど高くない。ラスト1周が59秒54と、いつもより5秒以上も遅かった。強い陽射しが好記録を阻んだようだ。

「体調は良い状態にありますが、今後自信を持てるようにしていかないといけない。リオ五輪で歴史を作るのは簡単なことではありません」

 来季のロンドン世界陸上を最後に、トラック種目からロードレースに軸脚を移すことを今大会前に表明した。ファラーは12年ロンドン五輪、13年モスクワ世界陸上、15年北京世界陸上と連続2冠を継続中。これに16年リオ五輪、17年ロンドン世界陸上を加われば、まさに歴史的な偉業と言っていい。

 バーミンガムのレース後に、今月3日に74歳で死去したボクシングの元世界ヘビー級王者のムハマド・アリ氏に言及した。

「今日、スタート地点で祈りを捧げました。彼は私にとっても偉大なヒーローだったのです」

 自身と同じイスラム教開祖をファーストネームとしたスポーツ界のレジェンドに、リオ五輪の金メダルを誓っていたのだろう。

◆今季の男子5000メートル&1万メートル

 どちらの種目も世界記録に迫るようなタイムは出ていない。

 5000メートルは2選手が12分59秒台をマークしているが、12分45秒より遅いレベルではファラーを振り切ることはできず、ファラーが得意とするラスト勝負に持ち込まれてしまう。今後のダイヤモンドリーグで12分30秒台を出す選手が現れれば、脅かすことができる。

 1万メートルはファラーの、ダイヤモンドリーグ・ユージーン大会優勝時の26分53秒71が今季世界最高。他の選手たちは26分40秒を切る力をつけないと、勝機はないだろう。

 ただ、ユージーンでは5位だったものの、イブラヒム・ジェイラン(26=エチオピア)が自己新の26分58秒75と復調してきた。11年テグ世界陸上10000メートルで、五輪&世界陸上では最後にファラーを破った選手である。

 当時は日本のHondaに所属して急成長したが、翌年以降は故障もあって低迷していた。ファラーと同じように強力なラストスパートができるタイプ。ファラーにとっては気になる存在だろう。