<ダイヤモンドリーグ第7戦:バーミンガム大会展望>

 陸上のダイヤモンドリーグ第7戦のセインバリーグランプリが30日、英国のバーミンガムで開催される。日本の高校生、桐生祥秀(17=洛南高)が男子100メートルに出場することで注目を集めているが、昨年のロンドン長距離2冠のモー・ファラー(30)ら多数出場する地元勢も話題となっている大会。女子100メートル障害金メダリストのサリー・ピアソン(26=豪州)も今季のダイヤモンドリーグに初登場する。見どころの多い大会だ。

 4月に10秒01をマークし、黄色人種初の9秒台も期待されている桐生だが、「今回はそこまでは無理」というのが陸上関係者の一致した見解だ。横一線でスタートする100メートルは周りからのプレッシャーを受けやすく、日本記録保持者でもある伊東浩司陸連男子短距離部長は「メンタルの要素が強い種目」と言う。それに加えて桐生は海外初遠征。客観的に見たら実力を出すのが難しい状況である。

 だが、桐生にはこれまでの高校生にない大物感が漂う。10秒01を出した織田記念は初めてシニアのトップ選手と走るレースだったが、ロンドン五輪で準決勝に進んだ山県亮太(21=慶大)や、日本選手権4連勝中の江里口匡史(24=大阪ガス)らを相手に、自身の走りを貫いた。

 5月5日のゴールデングランプリ東京は初めて外国人選手と戦った。9秒台の黒人選手が3人出場していたが、そのうちの1人に勝ち日本人トップも占めた。“初体験”の試合でここまで力を発揮できた高校生は、過去にいなかったのではないか。「タイムよりも、自分の走りができるかどうかをテーマに臨もうと思っています。ダイヤモンドリーグでも、自分の持ち味である前半から中盤にかけて加速する走りをしたい」と出発前に語った桐生。怖いもの知らずで突っ走る可能性もある。

 男女のハードル種目に注目の選手が出場する。

 男子110メートル障害で昨年12秒80の世界記録を出したアリエス・メリット(27=米国)は、5月に脚を痛めて試合から遠ざかった。先週の全米選手権で復帰して13秒23で3位。ぎりぎりでモスクワ世界陸上の代表入りを決めた。今大会でどこまで記録を伸ばしてくるか。

 女子100メートル障害のピアソンは今季、本職のこの種目に1試合しか出ていない。若手のブライアナ・ロリンズ(21=米国)が全米選手権で12秒26の界歴代3位をマーク。ピアソンのベスト記録を0・02秒上回った。世界陸上での新旧対決が注目されているが、1カ月半後の本番に向けてピアソンがどのくらいのタイムを出してくるか。

 地元のメダリストたちが観衆を沸かせる大会にもなる。ファラーのほかにも男子では走り幅跳びロンドン五輪金メダリストのグレッグ・ラザフォード(26)、走り高跳び銅メダルのロビー・グレイバース(25)、400メートル障害テグ世界陸上金メダルのデービッド・グリーン(27)らが出場する。女子ではロンドン五輪400メートル銀メダルのクリスティン・オフルオグ(29)が、2007年大阪世界陸上と翌年の北京五輪でも優勝したヒロインだ。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル〜8位1000ドル)。各大会のポイント合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、五輪や世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、米国勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、五輪や世界陸上よりも激しい戦いになる。