女子マラソンのアテネ五輪金メダリスト野口みずき(33=シスメックス)が25日、左大腿(だいたい)裏の炎症で29日の大阪国際女子マラソンを欠場すると発表した。ロンドン五輪の最終選考レースの3月11日名古屋ウィメンズ(旧名古屋国際)に出場する意向で、ジョギングも再開しているが、名古屋はぶっつけで臨むことになりそうだ。

 大阪市内で会見した広瀬監督は「左太ももの炎症で1週間から10日の療養」と説明した。19日までの米ボルダー合宿終盤、野口が「左のハムストリング(太もも裏)が突っ張った感じ」と訴え、帰国翌日の20日に京都市内でMRI(磁気共鳴画像装置)検査を受けていた。野口を治療する社会保険京都病院の原邦夫医師は「合宿の疲労により太もも裏の張りが取れない状況。ランニングは可能だが、万全の体調で選考会に臨めない」と説明した。「無理をするより、ベストの状態で出る方が納得がいく。選考レースですから」と広瀬監督は本人と話して24日に欠場を決めたという。

 野口は代表に決まっていた08年北京五輪でもレース5日前に同じ左太もも肉離れで欠場。その後も故障を繰り返してきた。大阪国際は4年2カ月ぶりのフルマラソンで、「トラックの女王」福士加代子(ワコール)との初対決が注目されていた。昨年10月に大阪参戦を表明して以来、2度のボルダー高地合宿を実施。42・195キロを走りきる体を急ピッチで作ってきたが、無理がたたったようだ。

 最悪の事態は免れたが、待ち受ける状況は厳しい。名古屋ウィメンズまでわずか1カ月半。レース出場や再合宿の実施も難しく、再発の恐怖心を抱きながら最後の選考レースを目指していくことになる。野口は主催者を通じ「帰国直前に痛めてしまいショックでした。しかし、少し休めば良くなる程度の症状なので気持ちを切り替え最後の選考会である名古屋に向けて頑張ります。私は諦めません!」とコメント。何度も故障を乗り越えてきたアテネの女王に、再び苦難が待ち受けていた。【近間康隆】<野口故障との闘い>

 ◆08年8月4日

 左脚痛のためスイス合宿を切り上げて帰国。左太もも肉離れで、レース5日前の同12日に北京五輪欠場を決定。

 ◆09年1月30日

 左脚痛で陸連のニュージーランド合宿を辞退。3月には、左太もも肉離れ再発で練習をしていないことが判明。

 ◆10年10月24日

 実業団女子駅伝西日本大会で2年5カ月ぶりに本格レース復帰も、同12月19日の全日本実業団対抗女子駅伝後に左足首内側付近の疲労骨折で全治5、6週間と診断。

 ◆11年6月15日

 夏のハーフマラソン出場意向を明かすが、左臀部(でんぶ)を故障。札幌国際ハーフ回避。<女子マラソンのロンドン五輪代表選考>

 昨年の大邱世界選手権と横浜国際、今年の大阪国際、3月の名古屋ウィメンズが選考レース。3人が選ばれる。世界選手権はメダル獲得した最上位者が内定だったが、赤羽有紀子(ホクレン)の5位が最高。横浜国際は木崎良子(ダイハツ)が尾崎好美(第一生命)との争いを2時間26分32秒で制し1歩リードした。名古屋は北京五輪13位の中村友梨香(天満屋)や大邱世界選手権10位の中里麗美(ダイハツ)が出場を表明している。尾崎好美(第一生命)や渋井陽子、土佐礼子(ともに三井住友海上)も出場が予想される。