東京オリンピック・パラリンピックが終わり、最近では新型コロナの感染減少もあって、「スポーツの秋」が戻ってきたように感じる。先日、日本オリンピックミュージアムを訪問してきた。

日本オリンピックミュージアムがあるのは、都内の明治神宮外苑。神宮球場、秩父宮ラグビー場、国立競技場があるエリアで、週末は大変にぎやかだった。神宮球場では高校野球の明治神宮大会、秩父宮ラグビー場では関東大学対抗戦の試合が行われていた。

私としては、この盛り上がりが戻ってきたことは素直にとてもうれしい。高校や大学の部活動も再開して、日本のスポーツが本当の意味で動きだしたという実感が湧く。観客も入ることによって、街全体の雰囲気もグッとにぎやかになる。

無観客という歴史に残る選択をした東京2020大会だったが、コロナショック以降の研究に影響を与えている。「スポーツの負の外部性(第三者への不利益・損害)研究」としてスポーツ興行と地域の感染症流行状況との関係性を検証する研究も増加傾向にあった。

ある研究では、この新型コロナウイルス感染拡大が潜在的スポーツ観戦者数に影響を与えたということはないというエビデンスもあり、このにぎやかさを間近で見て、「本当に今まで観戦しに行きたいと思っている人はいたんだ」と思った。

9月30日まで交通規制が行われていた神宮周辺は、より人の多さが際立っていたように思う。オリンピックミュージアムも大変な活気だった。

私もこのミュージアム立ち上げに関わらせていただいたが、当時はコロナ禍のことを想像もしていなかった。いま、大勢の人が来ている様子を見て、私個人の気持ちとしては、スポーツはもっと頑張っていかないと! と思った。

外のオリンピックのモニュメントには列ができていた。親子で東京に旅行に来たという方もいた。ミュージアム自体がオリンピックムーブメントの拠点として建設されたことを考えると、オリンピックムーブメントは単なる勝敗の象徴ではなく、オリンピックの価値である、フレンドシップ/エクセレンス/リスペクトをまずは広めて行きたい。そう感じた。

現在、通常のミュージアムとは展示などが多少異なっている。1階部分は「WELCOME SALON」として、東京2020大会一色になっていた。アスリートたちのユニホームがサイン入りで飾られ、東京オリンピック日本代表選手の顔写真が583人分あった。

2階に上がると、まさしくミュージアムとして、古代オリンピックの歴史、全大会のトーチの展示、1896年の近代オリンピック第1回から参加国の増加がすぐわかる展示などがある。歴代のIOC会長も掲示されているが、ちなみに初代IOC会長は「オリンピックの父」と呼ばれたフランス人のピエール・ド・クーベルタンではないことをご存じだろうか。1894年から1896年までの短い任期だったが、デミトリウス・ヴィケラスさんというギリシャ人の方が務めた。当時のヨーロッパはギリシャへの憧れが強くあったこともあり、そのために古代オリンピックの復興が成し遂げられたとも言われている。年表、歴史好きな私としては、見学はとても楽しい時間でもある。

歴代のオリンピック選手全ての名前も刻印されているが、これもこのミュージアムならではかもしれない。体験ブースではバレーボール選手のジャンプ力と競ったりすることができ、楽しむことができる。

トップアスリートはすごい! 才能がある! そう思うかもしれないが、卓越していくことの苦労もある。ただそれは、みんながそれぞれ、今この人生の旅を歩んでいけば、多少なりともあるだろう。

試合を観戦したり、この日本オリンピックミュージアムを訪問したり、そんな体験をして少しでもリフレッシュしたり、今頑張るアスリートたちから感じるものがあるとうれしく思う。(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)