昨年9月の韓国・仁川アジア大会でカメラを盗んだとして窃盗罪で略式起訴され、帰国後に無実を訴えた競泳の冨田尚弥(25)の公判が9日、仁川地裁で開かれた。証人として出廷した警察官は、現場などを捉えた監視カメラの映像を見た日本オリンピック委員会(JOC)役員が「冨田選手だ」と述べたと証言した。

 検察側は法廷で犯行現場だとする監視カメラの映像を上映。プールサイドを歩いてきた人物が約8分間、写真記者席に座り、後ろにあった黒い物体をつかみ、持っていたバッグに入れる様子が映っていた。警察官はJOC役員に同映像のほか、更衣室付近を歩く人物を捉えた別の監視カメラ映像も見せたとしており、JOC役員がどの映像から冨田と判断したかは不明。

 弁護側はこれまで「JOCは冨田選手がやったという決定的なシーンを見たわけではない」との見解を示している。冨田は見知らぬ人物が自身のバッグにカメラを入れたと主張していたが、上映された映像に別の人物は映っていなかった。裁判長は「第3の人物は登場していない」「画質上、映像の人物が被告人かどうか、黒い物体がカメラかどうかは確認できない」と指摘。冨田は公判後「(映像の人物は)僕ではない」と述べた。

 起訴内容によると、冨田はアジア大会中の昨年9月25日、チームの応援で訪れた文鶴水泳場で、記者席にあったカメラを盗んだとされる。当初、容疑を認めて略式起訴され罰金100万ウォン(約11万2000円)を納付したが、帰国後の11月に記者会見し犯行を否定、正式裁判を申し立てた。