世界5位の錦織圭(25=日清食品)が宿敵を最短時間で撃破し、2年連続で4強入りした。同8位のフェレール(スペイン)に6-4、6-2でストレート勝ち。昨年の準決勝では3時間近く競り合ったが、通算12度目の対戦で最短の1時間12分で決着をつけた。9日(日本時間10日未明)の準決勝では、準優勝した昨年に続く決勝進出を懸けて同3位のマリー(英国)と対戦する。

 錦織がマスターズ大会の初優勝に残り2勝と迫った。今季1勝1敗。通算12度目と最多対戦選手となるフェレールは第1関門だった。しかし、終わってみれば72分での快勝。「攻めを早くしてポイントを取れた」。元世界3位が好む長いラリー戦を封じ、最短時間での勝利につなげた。

 カギは第1セットの第3ゲームだった。「疲れもあって、メンタル的にレディー(準備が出来ている状態)じゃなかった」と、スタートで0-2とリードを奪われた。しかし、続く第3ゲームでフェレールがダブルフォールトを2本。「何もしなかった」のにゲームが転がり込んだ。

 そのスキに乗じて「吹っ切れた」。決して好調ではなかったが、展開を早くし、相手にプレッシャーをかける。クレーを得意とし、馬車馬のような粘りが身上のフェレールの凡ミスを引き出し、第1セット中盤からは自らのペースに持ち込んだ。第1セットを奪うと、第2セットは圧倒した。

 フェレールとの初対戦は、08年全米3回戦だった。錦織にとって全米本戦デビュー戦で、日本男子71年ぶりの全米16強入りを果たした劇的な勝利の試合だった。初めてトップ10を破った試合でもあり、それ以来、12度の対戦を積み重ね「特別な絆を感じる」と言う。ともにストロークを中心に組み立てるため、フェレール戦は「自分の調子を測るバロメーター」でもある。その相手に快勝し、2年連続で準決勝に進んだ。

 この日は、休みを利用し、大会序盤に応援に駆け付けていた姉玲奈さんの誕生日だった。錦織は「いけねぇ」と、大事な記念日を忘れていた様子。玲奈さんは、すでに帰国したが、フェレール戦の快勝を誕生日プレゼントとして、4大大会に次ぐ規模のマスターズ大会初制覇に向けて、ひた走る。【吉松忠弘】