FB五郎丸歩(29=ヤマハ発動機)が武器にする正確なキックの原点は、佐賀工時代の猛練習にあった。「ラグビー人生のターニングポイントになった」という02年度全国高校大会。花園でのプレーが飛躍への転機となった。準々決勝の東福岡戦。2年生だった五郎丸は、自身のキャッチミスで猛攻の口火を与えて12-58と惨敗し、泣きじゃくった。

 大敗で佐賀に戻ると、当時監督の小城博氏(65=現総監督)が「プライドをズタズタにした」という特訓が待っていた。1月上旬から小城監督とマンツーマンで1カ月半、雪や雨の日も毎日、せっけん水でぬらした滑るボールなどを使い、ハイパントのボールをすばやく処理し、正確にキックする練習を繰り返した。

 3年生で迎えた03年度の花園3回戦、国学院久我山(東京)戦が成長の証しだった。五郎丸は、瞬時の正確な「キックパス」でトライを演出し勝利に貢献。トップリーグでプレーする兄亮(31=コカ・コーラウエスト)は当時、関東学院大1年。弟をテレビ観戦し「(キックパスは)普通は発想がわかないスキル」と驚いた。佐賀工での礎は大きい。日本の南アフリカとスコットランド戦を現地で観戦した小城氏も「キック力やトライに加え、守備の強さはFBとして世界の5本の指に入ってもおかしくない」。まさに日本のキーマンだ。【菊川光一】