第3戦中国杯からの連勝を狙った浅田真央(25=中京大)は62・50点で4位発進となった。トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)で転倒し、1年間の休養から復帰後、3戦目で初の失敗。同時に連続3回転ジャンプには7年ぶりに成功し、収穫と課題が残る結果となった。4位以上で決まる12月のGPファイナル(バルセロナ)へ今日のフリーで巻き返す。

 浅田には予感があったのかもしれない。

 「とんとん拍子でいくので、『ちょっと待ってよ』という気持ちで…」

 先月のジャパン・オープンで復帰し、続く中国杯では優勝。3回転半の調子はすこぶる良く、予期した以上の調子に、逆に少しの不安が芽生えていた。決して的中してほしかったわけではない。ただ、「1度失敗をして、課題が見つかった。何かあった方が気持ちを新たに進めるんじゃないか」。演技直後に天を仰いだ曇り顔に、安堵(あんど)の気持ちも重なった。

 前を向かせる収穫があった。08年世界選手権SP以来7年ぶりに決めた高難度の3回転フリップ-3回転ループ。鋭く体を回しきった一発に、「すごくうれしいです」と明るさがのぞいた。冒頭に3回転半で転倒し、「体に負担があるなか、うまく切り替えられた」と振り返った。

 連続3回転をSPで跳ぶのは8季ぶり。復帰直後にもかかわらず、あえて挑む。決して無謀ではなく、しっかりとリスク管理がある。中国杯とこの日も、演技直前の練習で、本来のSPの構成にはない3回転ループを跳んだ。もし連続3回転に失敗した場合、最後のジャンプを単発のループに変更することを想定した試技で、本人が自発的に取り組む。従来は見られなかった危機管理意識で、自分の演技の現在地を冷静に見つめた判断が透ける。

 3回転半からの連続3回転は、女子では浅田以外になしえない。この日は代名詞で今季初転倒しながらも、心身を切り替えて大技を7年ぶりに決めた。「いろいろなバリエーションでやっている」という休養前とは違う準備、余裕も、その成功を支えたとみる。

 3回転半以外にも、課題としてきた後半の3回転ルッツは1回転に。「日によって波がある」というジャンプに安定感を増す必要はあるが、後退はしていない。この日は中国では衣装に合わせてピンクだった髪留めを黒に変更。髪にもウエーブをかけて、より大人っぽさを追求するなど、表現面での余念もない。「終わった後、ちゃんと分析できている。明日につながる」と話す姿は頼もしかった。【阿部健吾】