常翔学園WTB福留菜月(3年)が、観客席から大声で出場メンバーを盛り上げた。チーム唯一の女子選手で、全国トップレベルの男子部員とともに楕円(だえん)球を追い続けてきた。初めての花園は初戦敗退。試合後は涙を浮かべ「すごく悔しいです。みんな格好良かったです」と結果をかみしめた。

 仲間の支えで乗り越えた、高校でのラグビー生活だった。中学1年からラグビーを始め、兄優直(ゆうま)さん(23)が常翔学園ラグビー部だったことから伝統校の門をたたいた。「最初は練習についていけませんでした。男の子は速いし、当たりも違う」。男子部員と同じ練習メニューに取り組んだが、悩むことも多かった。

 練習試合に出場しても、体力差で相手選手に抜かれるシーンが目立った。それでも「『のけ者にされるのかな』って思ったんですけれど、みんな仲良くしてくれる。いい学年に恵まれたと思います」。4人程度が横に並び、ボールを回しながら走り込む練習の「ランパス」では、往復約200メートルを30~40本走ることもあった。そんなラグビー漬けの毎日にも「バイトとか、遊んで過ごす3年間より、みんなと思い出ができて楽しかったです」と言い切る。

 高校2年時にはチームのニュージーランド遠征に参加。現地ではスーパーラグビーに参戦中だったW杯イングランド大会日本代表のSH田中史朗(30)と交流する機会があった。田中からは「自分みたいに小さい選手でも活躍できる。頑張ってください」と声をかけられ、同じサイズの24・5センチのスパイクをもらった。「さすがに履くことはできないです…」と今も自宅で大切に保管する宝物だ。

 田中が活躍したW杯の戦いぶりもテレビでチェックした。来春から追手門学院大女子ラグビー部に入部予定の福留は「オリンピックはすごく大きな目標です」と20年東京五輪の7人制日本代表を夢見る。

 現在、同代表には常翔学園の前身の大工大高時代にラグビー部初の女子選手として活動した加藤慶子(27)が名を連ねる。福留は「加藤さんと東京五輪で同じグラウンドに立って、(常翔学園の)野上監督にメダルの報告をしにいきたいです」と究極の目標を掲げる。

 アピールポイントはコンタクトプレー。男子部員に混じって鍛えた長所は、今後の糧になるはずだ。12月30日、花園。悔し涙を流した同学年の仲間と同じように、福留の新しい挑戦が始まった。

 ◆福留菜月(ふくとめ・なつき)1998年(平10)3月26日、大阪市生まれ。小学校ではサッカーに取り組み、中学1年から女子ラグビーチーム「阿倍野ホーリーズ」(現在は活動停止)でラグビーを始める。女子7人制のポジションはプロップ。常翔学園ではWTBとしてプレーした。50メートル走は7秒2。154センチ。