高梨沙羅(19=クラレ)が、自身の持つ前人未到の連勝記録を2ケタの「10」に伸ばした。1回目にW杯ジャンプ台記録を2メートル更新する98メートルの大ジャンプをマーク。2回目も90メートルにまとめ、合計260・1点で今季11勝目、通算41勝目を挙げた。勢藤優花(北海道メディカルスポーツ専門学校)は18位、伊藤有希(土屋ホーム)は20位、岩渕香里(松本大)は30位だった。

 あまりに鮮やかな飛行曲線に地元ファンもわいた。高梨の1回目。昨季の個人総合女王、イラシュコ(オーストリア)が持つW杯でのジャンプ台記録96メートルを超え、98メートルに達した。目の前で地元選手の記録が塗り替えられても、集まったオーストリアのファンが拍手せずにはいられないほどの飛距離。「自分の中でもベスト」と納得のジャンプだった。あまりに飛びすぎるため、ただ1人ゲートを1段(50センチ)下げた2回目も90メートルをマーク。2位と18・1点差をつける圧勝で節目の10連勝を飾った。

 ジャンプではだれも到達していない連勝記録。それは自分との闘いでもある。前日6日、同じジャンプ台でただ1人の90メートル超えを2本そろえた。圧倒的な結果で勝ち星を重ねても満足しない。飛び出しのタイミングにしっくり来ず「2本とも失敗」と反省した。勝って当たり前の状況に、内容も伴う完璧さを求める。その向上心がさらに自身を強くさせている。

 内容にこだわる理由がある。男女通じてすでに最多連勝記録を塗り替え続けているが、ついに10連勝で2ケタに乗せた。それでも「男子のレベルには達していない」という。名選手らに数字で上回っても納得することはない。男子に劣らない技術こそ、高梨が求める最高の理想だからだ。

 4日間で3戦をこなす過密日程をこなし、残り7戦。個人総合3連覇を逃した昨季の反省から、夏場は基礎トレーニングに時間を費やしてつくった土台が正確なジャンプをつくりあげた。今季唯一優勝を逃した第2戦の2回目以外、すべて1位の得点をたたき出している。W杯通算勝利数も男子歴代2位のニッカネン(フィンランド)にあと5。「今季はいい流れ。そんな偉大な人と並べるチャンスがあるのは、自分のモチベーションになる」。今の高梨に負ける姿は想像できない。

 ◆スキーW杯の連勝記録 ジャンプで高梨の10連勝は男女通じて歴代最多。男子ではアホネン(フィンランド)モルゲンシュテルン(オーストリア)シュリーレンツァウアー(オーストリア)が6連勝している。日本人では複合で荻原健司が93年3月から94年1月にかけて、シーズンをまたいで5連勝。フリースタイルスキー・モーグルの上村愛子も08年2月から3月にかけ、5連勝している。