プレーバック日刊スポーツ! 過去の7月22日付紙面を振り返ります。2003年は競泳の北島康介が世界選手権の男子100メートル平泳ぎを世界新で制しました。

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<世界水泳選手権>◇21日(日本時間22日)◇9日目◇スペイン・バルセロナ・サンジョルディ体育館特設プール

 北島康介(20=東京SC)が、日本人初の世界選手権競泳金メダル、2度目の世界新記録樹立の快挙を成し遂げた。男子100メートル平泳ぎ決勝で59秒78をマーク。01年にスロードノフ(ロシア)が記録した59秒94を上回り、昨年10月のアジア大会男子200メートル平泳ぎに続く世界新記録をマークした。日本人で2種目の世界記録は200、400メートル自由形の山中毅以来42年ぶり。100メートルで完全に世界の頂点に立った北島は200メートルでのダブル金とコモルニコフ(ロシア)に抜かれた世界記録の更新を狙う。

 どよめきが地鳴りのように館内に響きわたった。「WORLD RECORD」の文字が電光掲示板に光り輝く。北島は喜びをかみしめるようにガッツポーズを繰り返した。昨秋のアジア大会200メートルに続く世界新記録。そして競泳では日本人初の金メダル。20歳の日本のエースが、100メートル平泳ぎを「完全制覇」した瞬間だった。

 世界記録は時間の問題だった。前日20日の予選から自身の日本記録に0秒13迫る1分0秒20の好タイム。準決勝(日本時間21日深夜)では、スタートでミスをしながらも、スロードノフの世界記録59秒94に0秒04と迫った。「慌てない。冷静にいく。普段通りいけば勝てる」と自らを言い聞かせながらスタート台に上がった。前半から思い切りよく飛び出すと、後半は気迫のスパートを見せた。

 世界記録はもちろんだが、金メダルにもこだわっていた。昨年10月アジア大会で出した2分9秒97の世界記録が、今年6月、コモルニコフ(ロシア)に0秒45短縮された。自らの偉業はあっという間に歴史の中に埋もれた。「世界記録は抜かれたら終わり。金メダルは永久に歴史に残る。忘れられない」。北島の金メダルへの思いは強くなった。世界大会での100メートル平泳ぎは、00年シドニー五輪は0秒43差、01年前回福岡大会は0秒06差でメダルを逃した。しかし、今回、来年のアテネ五輪前哨戦となる最高の舞台で、最も輝くメダルを手に入れた。

 これまで以上に結果にこだわる理由もあった。6月に事実上のプロ宣言。現在所属事務所が支援を受けるスポンサー企業と交渉している。事務所関係者は「数社と交渉しているが、各社とも今大会の結果を待っている」と説明した。結果がすべて自分の価値に跳ね返るシビアな世界。それでもトップスイマーとしてさらに進化するため、厳しい環境を選んだ。

 明日23日からは200メートルが控える。「今大会は目標のアテネ五輪金メダルに向けて大事な大会。自分をアピールして、来年の五輪では有利な立場で戦いたい」。200メートルでは、コモルニコフに抜かれた世界記録を再び更新、そして金メダルを狙う。平泳ぎの「完全制覇」は、来年の大目標への大きな大きなアドバンテージになる。

 北島の話 本当にうれしいです。自分が前に出たのも、調子がいいのも分かっていた。50メートルを28秒62でターン? もっと速く入っても良かったけど、後半伸びる泳ぎができたので…。次の200メートルでは(コモルニコフに)取られた世界記録を取り返す泳ぎをしたい。

 ◆北島康介(きたじま・こうすけ)1982年(昭57)9月22日、東京都荒川区生まれ。シドニー五輪男子100メートル平泳ぎで4位、01年世界選手権男子200メートルで銅メダル獲得。昨年10月アジア大会同200メートルで2分9秒97の世界新をマークするも6月にコモルニコフ(ロシア)に2分9秒52と塗り替えられた。100メートルの自己ベスト1分0秒07は世界歴代2位。今年6月からサッカーの中田英寿(パルマ)も所属するPR会社サニーサイドアップと契約、日本水連からプロ活動も承認された。177センチ、77キロ。

※記録や表記は当時のもの