女子は世界女王の高梨沙羅(20=クラレ)が、鉄人の「金言」を胸に圧勝した。1回目134メートル、2回目も130メートルで2回合計268・7点で連覇。今春、冬季アスリートの勉強会で04年アテネ五輪の陸上男子ハンマー投げ金メダルの室伏広治氏(42)から自身を「客観的に見る」ことを教えられ実践。技術だけでなく精神的にも成長を続ける女王が18年平昌五輪での悲願の金メダルに挑んでいく。

 さあ、沙羅の季節がやってきた。時おり小雪が舞う、冬到来を思わせる北都で、高梨が、特大のアーチを2本そろえ圧勝した。前日29日、日本ハムが10年ぶりに日本一に輝いたが、今度は世界女王の番だ。前夜の日本シリーズ第6戦は終盤までテレビ観戦。「やるべきことをやってベストを尽くしたいので」と大会に備え、優勝の瞬間は夢の中だったとはいえ、早朝に優勝を確認すると力に変え、大ジャンプで会場を沸かせた。「最後まで諦めず粘り強く戦うパワーというものはジャンプにつながる。力をもらいました」と笑った。

 もう誰も止められない。今季初めて冬仕様のレールでの大会。1回目にタイミングが遅れても、ヒルサイズ(134メートル)まで飛距離を伸ばしてあっさりトップに立った。2回目もK点に届く選手がいない中、高く、力強く舞い上がり一直線に伸びて130メートルまでぶっ飛んだ。2位との得点差は68・6点。際立つ存在感でシーズン開幕戦をあっさりものにした。「(12月開幕の)W杯に向けていい練習ができている」と順調さを口にした。

 鉄人の教えを心に刻んだ。4月に国立スポーツ科学センター(JISS)で行われた冬季アスリートの勉強会に室伏氏が登場。その会で自身を「客観的に見る」ことを伝えられた。最近はジャンプ映像だけでなく、バラエティー番組に出演した映像もチェックし、自身を見つめられる目を養い競技力につなげている。「自分の感覚と実際の映像とを擦り合わせていくことをしている」と話す。

 今季は来年2月に18年平昌五輪の前哨戦、世界選手権(フィンランド)がある。「そこに向けて高めていければ」。世界女王は地位に甘んじることなく着実に歩を進めていく。【松末守司】