世界5位の錦織圭(27=日清食品)が、ツアー通算12度目の優勝を逃した。元トップ10で同17位のディミトロフ(ブルガリア)に2-6、6-2、3-6のフルセットで敗れ、4大大会前哨戦としては自身初の優勝はならなかった。今日9日にはシドニーで行われるオーストラリア選抜対世界選抜の非公式戦に参加予定で、16日開幕の全豪(メルボルン)で、悲願の4大大会初優勝に挑む。

 力が続かなかった。第2セットの途中で、左臀部(でんぶ)に違和感を感じたこともあり、無理はしたくなかった。最終セットの勝率で歴代1位のしぶとさも、16日から始まる全豪を控えた体に負荷をかけるのだけは避けたかった。「大事ではないと思う。2~3日、様子を見る」と100%の力を発揮しないまま、全豪の前哨戦を終えた。

 対戦成績は錦織の3勝0敗だが、これまでとは全く違った。どんな長いラリー戦になっても、相手はミスをせず「なかなか(ポイントが)取れないと感じた。やりづらかった」と苦戦した。錦織のお株を奪われ、最後は心身ともに守りに回った。第1セットは第1サーブが79%の高率で入ったとはいえ、そのうち58%しかポイントに結びつけられなかった。それは相手のリターンとラリーにミスがなかった証拠。「チャンスがあった。もったいなかった」と悔やんだ。

 昨年2月のメンフィスオープンでの優勝以降、5回連続で決勝で敗れた。ジョコビッチに2度、ナダル、チリッチ、そしてディミトロフに1度ずつ。それでも「競ってはいる。決して(決勝での)内容は悪くない」と前を向く。

 そこにはテニスは決して悪くないという自信がある。「(勝った)3回戦、準々決勝のプレーはすごく良かった」。前哨戦初Vはならなかったが「できるだけ多くの試合数をこなしたい」という当初の目的は達成できた。

 今日9日のシドニーの非公式戦への参加は「まだ分からない。明日、起きてみてから判断したい」と臀部の様子をみながら決断する。悲願の4大大会初優勝に向け、残り1週間。準優勝とはいえ、過去最高の滑り出しで年始の開幕戦を終え「初めて(開幕戦で)決勝を戦えた。十分に自信になる」と話す。4大大会初制覇に、間違いなく大きなステップを刻んだ開幕戦だった。【吉松忠弘】

 ◆WOWOWメンバーズオンデマンド配信予定 男子テニス団体戦FAST4 オーストラリア選抜対世界選抜 9日午後5時10分~。