プレーバック日刊スポーツ! 過去の2月11日付紙面を振り返ります。1997年の1面(東京版)は米プロバスケットボールNBAのオールスターでマイケル・ジョーダンが史上初の「トリプルダブル」を記録した様子を伝えています。

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 【クリーブランド(米オハイオ州)9日(日本時間10日)】マイケル・ジョーダン(33=ブルズ)がまたNBAの歴史に名を刻んだ。14得点、11アシスト、11リバウンドでオールスター史上初の「トリプルダブル」を記録。MVPこそ譲ったが、東軍の逆転勝ちを呼び込み「スーパースターの祭典」の主役の座は今年もジョーダンだった。

 ジョーダンが跳んだ。第2クオーター(Q)残り40秒だ。ジョーダンの次のスターといわれるグラント・ヒル(24=ピストンズ)がフリースローを外した瞬間だった。その背後から舞い上がったジョーダンが空中でリバウンドを取ると、そのままスラムダンクをたたき込んだ。「エア」と呼ばれるジョーダン独特の“空中遊泳”は満員の観衆の度肝を抜き、同時に大喝さいを浴びた。

 第2Qだけで11得点を稼ぎ、最大23あった点差を3までにして、逆転のおぜん立てをする。第3Qに入ると今度はリバウンドを取り、さらにMVPのライスらに次々とアシストのパスを送る。跳んで、入れて、パスを通す。その結果が、オールスター史上初の「トリプルダブル」だった。ジョーダンはレギュラーシーズン27回、プレーオフで2回(89、93年)記録しているが、今年また新たな勲章が加わった。

 ジョーダン自身が一番驚いた。「オールスターで今までだれもやっていないなんて、本当に知らなかったんだ。公式戦でもなかなかできないのに、この場でできたことを本当に驚いている」と目を丸くした。オールスターでは、それぞれのプレー時間は短い。ジョーダンがこの日、プレーしたのは約半分の26分間。そこでのトリプルダブルだけに「不可能を可能にした」ほどのインパクトを持っていた。この日集まったかつてのスーパースターたちも、自分たちができなかった記録をいとも簡単に達成したジョーダンを、せん望のまなざしで見つめていた。

 今回のオールスターでは親友のバークレー(33=ロケッツ)をはじめ、ドレクスラー(34=同)ユーイング(34=ニックス)らのベテランスターがけがで欠場した。コートの上にはヤングスターが躍る。東軍のメンバーでは、ジョーダンが最年長だ。17日には34歳の誕生日を迎える。選手生活もそう長くない。

 しかし、現在のスターたちとは格が違うことを、この試合で印象づけた。ファン投票史上最多の245万票を集めたが、それに見合うだけの活躍をしてみせた。「毎年若い、才能のあるヤツばかりが集まってくる。だがヤツらと競うことがつらいほど、年をとっているとは思わない。競い合っていたいと思っている。まだ問題は何もない」。

 来年も現役を続行すると表明したばかり。「オレはまだこれからだ。もっともっと良くなる」。スーパースターの闘争意欲は少しも衰えることを知らない。

 ◆トリプルダブル 1試合で得点、アシスト、リバウンド、ブロックショット、スチールの5部門中、3部門で2ケタ以上をマークすること。オールラウンドプレーヤーの証明となる記録。得点、アシスト、リバウンドの組み合わせが最も多い。今季のトップは4度マークしたピストンズのグラント・ヒル。4部門の2ケタ成績はクアドラプルダブルと呼ばれる。94年2月にスパーズのデビッド・ロビンソンがピストンズ戦で34点、10アシスト、10リバウンド、10ブロックショットで達成(史上4人目)して以来、だれも記録していない。

※記録と表記は当時のもの