失敗があっても97点が出せたことが、逆に羽生の強さを示していた。得点が表示されると、自身も驚くほどだった。最初のジャンプ、4回転ループは、跳び上がってから着氷するまでなめらかに弧を描き、今季最高の出来栄え点2・29点をマーク。また「動作の1つ1つをお客さんに向けてやった」と、プリンスの曲に合わせたノリノリの演技で演技構成点でもトップをマーク。5つの要素で出場選手中唯一9点をたたき出した。

 4大陸選手権は11、13年と銀メダルを獲得して以来、ここ3シーズンは3月の世界選手権を重視して回避していた。今季出場を決めたのは、もちろん来年の平昌五輪の会場を試すため。1月の韓国選手権を先に視察したオーサー・コーチからはリンクの状態、雰囲気を写真とともに伝えられていたが、実際に来て感じるものは格別だった。初めて会場を訪れた14日にはソチ五輪と似た青い内観に「幸せ」と感動。外観も自分のスマートフォンで撮り、記録を残した。初めて滑った氷の感触も良く、韓国メディアの取材には「五輪で連覇する確信ができた」と明かしていた。

 「また、もう1回この場所でフリーが滑れる。もっと幸せを感じて滑りたい」。滑走順23番はGPファイナルと同じ「得意な順番」。4回転ループと表現の武器を携え、フリーで勝ちにいく。【高場泉穂】

 ◆羽生結弦(はにゅう・ゆづる)1994年(平6)12月7日、仙台市生まれ。09年ジュニアGPファイナルを14歳の史上最年少制覇。宮城・東北高在籍時の11年にシニア転向。14年ソチ五輪金メダル。昨年12月に男女通じて初のGPファイナル4連覇達成。171センチ。