Bリーグ1部(B1)東地区最下位の仙台89ERSが、特別な思いでコートに立つ。今日11日からアウェーで西地区首位のシーホース三河と2連戦。東日本大震災が起きた3月11日に試合を行うのはbjリーグ時代の12年、福岡戦以来5年ぶり。10日、仙台市内で調整した主将の志村雄彦(34)は「なぜ、ここでバスケットを続けているのかを示せるのが一番」と強い決意を示した。

 現メンバーで震災時に仙台に在籍したのは志村だけ。「今でも震災中だと思う」と考える。バスケットをしたくてもできなくなった人たちが大勢いる。だからこそ「すべてを出し切るのが使命」と言った。当時ゼネラルマネジャーだった間橋健生ヘッドコーチ(HC、45)は「そういう日にバスケができる幸せ、感謝できるいい機会」と3月11日をかみしめた。

 ホーム開催が長期的に不可能になるなど、震災直後の11年3月17日に仙台は活動休止を発表。志村は琉球へと、選手たちは他チームにレンタル移籍してばらばらになった。間橋HCは「あの時はバスケットができるかどうか分からなかった」と振り返り、チーム消滅の危機にも直面した。

 11~12季に活動を再開した仙台は、そのシーズンの12年3月11日、アウェーで福岡に逆転勝ちした。当時栃木に在籍していた仙台市生まれの片岡大晴(31)は「自分のキャリアの中で、ここでプレーするべきだと思っていた」と震災がきっかけになって京都、北海道をへて昨季仙台に移籍したいきさつを明かした。

 今回は西地区の首位を独走する三河で、一筋縄ではいかない相手。それでも片岡は「いつも以上に、宮城のことを考えてコートに立つべき」と力を込めた。志村が「意味のある出来事」と言う3・11の一戦。意義のある勝利を届ける。【久野朗】