20年東京五輪・パラリンピックを目指す強烈なアピールになった。弱冠15歳、まだ中学3年の伊藤ふたばが、ユースB(14~15歳)で圧巻のパフォーマンスを見せた。

 予選で8課題をすべて一撃(最初のトライで完登すること)し、7選手が進出した決勝でも3課題をすべて一撃。11連続一撃で、誰も寄せ付けずの圧勝だった。「予選から決勝まですべて一撃は、う~ん、ないかもしれません。もしかすると、2年前のこの大会(ユースC=12~13歳)であったかもしれませんが、よく覚えてません」。

 伊藤自身も記憶にないほどの、完璧なボルダリングに、安井ヘッドコーチも目を丸くした。「すばらしい動きでした。登る前から、これは行くなという空気が漂っていました。技術的にもフットワークが改善されていて、以前のようなフワフワした足の運びではなくなっていましたね」。うれしい悲鳴は、伊藤世代に向けて力強いコメントとなって表れた。「伊藤、森がいるカテゴリーは、ものすごい層の厚さになっていることが、今日の大会を見てはっきりしました。2人が抜けているだけかと思われるかもしれませんが、彼女たちをして必死になって結果を出さなければならないほど、人材、タレントが豊富ということです」。2位森秋彩、3位菊地咲希、4位青柳未愛までが、決勝3課題をいずれも完登しており、最後はトライ数での勝負になっていた。

 安井ヘッドコーチの期待は膨らむばかり。「野口、野中と比べると、経験値、フィジカルでまだ差はあります。しかし、彼女たちの今日のボルダリングを見れば、大人世代も必死にならざるを得ません。ユースBはギリギリ東京五輪に間に合う世代ですから」と、続けた。いわゆるプロ野球の松坂世代のように、ボルダリング女子では伊藤ふたば世代が大きなムーブメントを起こそうとしている。

 ボルダリングを制した伊藤と、4月にリードを制している森は、8月下旬から9月にかけてオーストリア・インスブルックで行われる世界ユース選手権に出場が内定した。伊藤は「去年のワールドユース(世界ユース選手権)ではボルダリングで2位、リード9位でした。今年は両方で優勝したい」と、即答で目標を口にした。

 伊藤は来年からW杯に出場できる年齢に達する。開催年の12月31日時点で満16歳であること、という年齢制限をクリアするからだ。160センチの恵まれたスタイルと、柔軟性、そしてホールドを確実につかめる保持力があるだけに、世界の舞台でどれだけ経験を積めるか、非常に期待が持てる。

 伊藤は2年前の日本ユース選手権のユースCで優勝し、翌年は森がユースCで優勝。この日3位に入った菊地が昨年のユースBを制している。伊藤がW杯出場権を獲得すれば、彼女たちも黙っていない。14~15歳の爆発的な成長曲線と、相乗効果によって世界の女子ボルダリング勢力図は、ますます活発に動いていきそうだ。