女子シングルスの世界女王、奥原希望(22=日本ユニシス)が、2年ぶりの優勝に前進した。2回戦で、優勝した8月の世界選手権(英グラスゴー)の決勝で1時間50分の激闘の末に破ったシンドゥ・プサルラ(インド)に2-0で完勝し、8強進出を決めた。目標は東京五輪の金メダル獲得と、女子レスリングの吉田、伊調のような「絶対女王」になること。年に1度の日本開催の大舞台で負けるわけにはいかない。

 地元の歓声は力になる。世界選手権の決勝で1時間50分を要したプサルラを48分で退けた奥原は「たくさんの観客のみなさんの声援がパワーになった。一緒に戦えた」と笑みを浮かべた。試合後、「ウイニングシャトル」を約5000人の観客で埋まった会場に打ち込んだ。

 勝利のカギは第1ゲームだった。序盤の劣勢から巻き返し、15-11と差を広げた。五輪の準決勝で敗れ、世界選手権で勝った因縁の相手。勝利への欲が過剰になり、逆に動きは鈍った。5連続失点で逆転を許すと「勝つことより1本1本」と言い聞かせ、16-18から5連続得点で競り勝った。

 世界選手権から帰国した際の会見で「女子レスリングの吉田さん、伊調さんのように勝って当たり前と思われたい」と言った。今月上旬、都内で行われたイベントでは五輪連覇、世界選手権5度優勝の男子の林丹(中国)らと同席。「そんな選手に比べたら、自分はまだまだ」と、勝つより負けて騒がれる「絶対女王」を目標に定めた。貪欲に高みを目指すことが、東京五輪の金メダルにつながると信じている。

 今大会には思い入れが強い。五輪、世界選手権に次ぐ格付けのスーパーシリーズ(SS)。2年前にSS初優勝を果たし、五輪銅メダル、世界選手権金メダルの飛躍につなげた。「明日もファンの方から、たくさんのパワーをもらえると思う」。年に1度の国内開催の大舞台。地元の追い風も武器に世界女王として、2年ぶりの優勝を勝ち取る。【田口潤】

 ◆奥原のプサルラ戦 身長22センチ差、179センチのプサルラとは通算5勝4敗。初対戦は12年7月のU19世界選手権で1-2と敗れた。2戦目の14年11月の香港オープンで初勝利。昨年リオデジャネイロ五輪準決勝では0-2で敗れた。奥原は銅、プサルラは銀メダル。8月の世界選手権決勝では2-1で勝ったが、前週の韓国オープン決勝では1時間23分の熱戦の末、1-2で敗れた。21日付の世界ランキングで奥原は、山口の4位に次ぐ日本人2番目の8位、プサルラは2位。1位は戴資頴(台湾)。