日大アメリカンフットボール部の選手が悪質なタックルを犯した問題で、日大が関学大に提出した2度目の回答書が26日、明らかになった。関学大がこの日開いた会見で公開した。
以下は日大の回答書の中盤部分。
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(6)監督の発言について
「監督に『責任はおれがとる』と言われていた」(MBS)、「関係者は反則が内田正人監督の指示だったとも明かした」(日刊スポーツ)、「『試合に出場したかったら、1プレー目で相手のQBを壊してこい』と指示した」(ハドルマガジン)等の報道については、「つぶせ」は、アメフトでは日常的、慣例的に過去からずっと使い続けてきた表現であり、反則を容認するものではなく、実際に犯罪としての傷害を指示する意図の発言ではありません。
それぞれの発言の真意は、あくまで、思い切ったプレーをした結果の反則は監督が責任を取るということであり、相手選手への傷害を指示したものではありません。
現在の確認作業では、当該選手に反則行為をうながすような指示や言動は確認できず、また、聴取したアメフト部の他の部員からは、監督が直接部員に指導することはほとんどなく、指示を出すときコーチ又は4年生の幹部に指示して部員に伝えるという方法で行われたということになります。
今回確認した範囲内では、当該選手が、監督からプレー上の指示を直接受けたことがないということです。直接反則行為は促す発言をしたという事実は確認されておりません。もっとも、日大アメフト部内における監督とコーチ間で、いつ、どのように意思疎通や意思決定が行われているか等について、井上コーチの弊部選手に対する言動が、井上コーチの独断によるものか、監督の指示や合意に基づくものかは、判断がつきかねるところです。
(7)井上コーチの発言とその意図について
井上コーチが弊部選手に「QBを潰せ」という趣旨の発言をしたことは、井上コーチ自身が認めており、他の部員からの証言もあり、確認されております。
一方、井上コーチが「関学のQBを壊せば、秋の試合に出られなかったら、こっちの得だろう」と発言した点については、井上コーチは否定しており、確認作業の中においては、他の部員の中でもそのような発言を聞いた者がおらず、確認は得られませんでした。
井上コーチは、弊部選手を来年4年生のリーダーとして育てるため、同人のおとなしく、自分の感情や意見を表に出さない性格を改めさせ、向上心や闘争心を持たせたいと思い上記発言をしたと述べています。また、弊部では「潰せ」と言う言葉はよく使われており、強いタックルをする等の意味であって、相手選手に怪我をさせろという意味ではなく、本件においてもそのような趣旨から発したものではないと述べています。他の部員達も、「潰せ」という言葉については、よく使う言葉であり、相手選手に怪我をさせるという意味ではないと述べています。
井上コーチが上記発言をした趣旨、意図について、井上コーチは、弊部選手が日大豊山高校時代からアメフト部の監督を務め、以後日大入学後も合わせ5年の付き合いで信頼関係があり、同人が来年4年生になる折にアメフト部のリーダーの一人として育てようと、厳しく練習中指導をしていた旨述べていること、井上コーチが弊部選手の一連の反則行為をみて、弊部選手に対し、その後のプレーに先立ち「キャリア(ボールを持っている選手)を狙え」と注意した事実は確認できました。なお、他に井上コーチから同様の指示を受けて反則行為をした部員の存在は確認できませんでした。現状の確認作業においては、井上コーチの指示が、弊部選手をして、相手選手に怪我を負わせることを指示したり、意図したものとまで結論づけることはできないと考えます。
また、井上コーチは弊部選手に対し、単に「潰せ」と述べるにとどまらず、「アライン(セットする位置)は、どこでもいい」「1プレー目で相手のQBを潰してこい」と具体的な指示を出し、「QBを壊す」ことを試合に出るための条件として挙げるなどしており、これが一般的な声掛けの範囲に留まるものか否かについて、同僚の選手の証言では、当該選手が井上コーチから本気でQBを潰すような行為を指示されていると思いこんでいたことが窺える発言もあり、今回の確認のみで井上コーチの真意を判断することは困難と考えております。
(8)今回の問題の原因について
1・まず、背景として、一昨年4位のチームが昨年度学生日本一となるために、かなり厳しい練習を続けてまいりました。今でも、他チームと同様の練習量・質では、関東でも優勝できる程のチームではないと考えています。それを、優勝へと引き上げるための厳しい練習が重なり、チーム内に無理が広がり、いわばチームに金属疲労を起こしている状態であったということが背景にあります。
2・その上で、監督、コーチ及び各ポジションリーダーと、現場の選手との間の意識の差が、今回の問題の本質と認識しております。つまり、監督、コーチ及び各ポジションリーダーは、選手が思いきってプレーすることで、結果として反則を取られても、それを反省することで次に繋がる、成長できる、との意識で選手を指導しておりました。特に本番である秋季リーグ戦に向け、この時期(春季)の試合はその意識が強くあります。繰り返しになりますが、指導にあたり、「強い掛け声」での「つぶせー」や「壊せー」は日常のことであります。しかし当然ながら反則を容認するものではなく、実際に犯罪としての傷害を指示する意図の発言ではありません。
一方、受け取る側の選手について、通常であれば、一年生からの練習試合を通じて、そのような場合、どの程度のタックル、サックを求められているのかは、ゲームの中で理解し合えることであったと思われます。しかしながら、今回は、本当に壊す(怪我をさせる)と受け取り、今回の試合出場の条件として示された「相手を潰せ」を当該選手は「怪我をさせろ」と受け取ってしまったようです。
今回、試合の直前での先発メンバーに加えるにあたり、「1プレー目で相手のQBを潰してこい」との発言も、同様に「QBをサックしろ」との意味でいたしましたが、当該選手は言葉どおり「QBを潰す=怪我をさせる」と解してしまったようです。当初、先発メンバーから外れており、本人の直訴に対して出場するための条件として言われたことにより通常であれば考えられないような反則行為をやらざるを得ないと思わせてしまうような状況に追い込んでしまったことは、日々の練習における監督コーチと選手のコミュニケーション不足、信頼関係不足から起きたと思われ、深く反省しております。
なぜ、今回に限って今まで重大な反則行為を行ったことがなかった当該選手がそのような行為に及んだかという点については、以下が貴部の疑問に対するお答えになると思われます。
監督、コーチは「つぶせ」「壊してこい」を日常的、慣例的な指示として捉え、選手はなんとしても無理にでも「つぶす」「壊す」ためにタックルに行かなければならないと、いわば強迫的な感覚を持って向かっていったという、いわば決定的な認識の齟齬がなぜ起こったのかという点です。
これは、弊部選手が、通常の練習、連休中の集中練習、メンバー決定等の課程を経て精神的にかなり追い詰められていたという点が指摘できると思われます。その上での指示の捉え方に大きな影響を与えたと考えられます。弊部選手は、上記井上コーチの言動を相手選手の身体に損傷を与えるような反則行動を求めていると解釈して、反則行為を行いました。
その原因については、日頃から相当厳しい練習が重なっていたうえ、5月の連休に入ってからは実戦形式の試合に出してもらえず、積極性がないことを井上コーチから叱責され、一人だけグラウンドの走り込みを命じられるなど、急に弊部選手に対する指導や練習が強化され、精神的に相当追い詰められていた状況下、関学との試合に出るための条件として「QBを壊す」ことをコーチに挙げられるなどしたことから、文字通り「相手を潰す」ことを求められ、そのような反則行為をやらなければ試合に出してもらえないと思い詰めていったものと推察されます。
弊部選手が井上コーチから厳しい指導を受けていることについては、同部の4年生幹部が井上コーチの弊部選手に対する期待が大きく、さらにリーダーとして飛躍させるために、本人のおとなしい性格を改めさせ、闘志を表に出させるためにあえて本人を追い込んでいたと観ている者もいます。
もっとも、現在のところ、部として選手本人から直接事実の聞き取りが出来ておりませんことから、弊部選手の真意を正確に把握することはできておりませんが、なぜ、このようなことが起こってしまったかの原因についてですが、弊部といたしましては、弊部選手を追い込んだ精神状態にし、それによって弊部選手が思い込んでしまったことが、反則行為の原因であると考えております。
(9)第三者委員会設置について
現在の確認作業では、具体的な指示の内容やその真意、弊部選手が反則行為を行って相手選手を負傷させた原因や理由について、弊部選手を追い込んだ精神状態にし、それによって弊部選手が思い込んでしまったことが、反則行為の原因と考えておりますが、確定的な結論を出すには至っておりません。大学間のアメフト部の試合中に反則行為により相手選手が負傷するという重大な結果を招いた事案であるため、第三者委員会を設置し、調査をしていただき、原因究明、再発防止に繋げていく所存です。
(10)弊部選手について
今回の反則行為の原因は上記にてご説明しましたとおり、現状では、指導と指導を受ける側の認識の乖離と考えております。弊部選手もいわば追い込まれて今回の行動へ繋がったものです。このような状態に追い込んでしまった責任は指導者にあり、本人には責任はありません。フィールド上の責任はすべて監督にあります。
弊部選手がこれ以上不利益を被らないよう、貴部及び世間の皆様には、ご配慮いただきたく、伏してよろしくお願い申し上げます。
(全文3へ続く)