マドリードが五輪招致レースで苦戦している。頼みの綱、スペイン人のサマランチ前国際オリンピック委員会(IOC)会長の影響力低下が大きな原因とみる関係者が多い。

 サマランチ氏は1980年から2001年まで会長を務めた。商業主義路線で多額の放送権料とスポンサーマネーを呼び込むことに成功し、「IOCの黄金期」を実現した。98年冬季五輪の招致競争では、長野を支持し票を取りまとめたことでも知られている。

 マドリードは4年前の立候補ではロンドン、パリ、ニューヨークといった強豪を相手に健闘し、前会長の功績をたたえる委員を中心に、根強い支持を得ていることを証明した。しかし今回、マドリードに対するIOC委員の評価は低い。

 89歳の前会長は30日、IOC本部ホテルのロビーでかつてのような鋭い眼光をたたえることなく、終始穏やかなほほ笑みを浮かべていた。「わたしはもうずっと前に引退した身だから」と話し、数人の旧友との会話を楽しむと、疲れたのか、小さくなった体をソファに沈めた。

 かつての側近は「引退して既に8年だ。影響力が失われるのは当然」を語り、オセアニアの委員の一人は「彼にはIOC委員にしてもらったが、だからといって忠誠を誓うことはない」ときっぱりと話した。