東北の名将が、数々の偉業を積み重ねた強豪校から去った。秋田・能代工高バスケットボール部の加藤三彦監督(45)が3月31日、同校を退職した。1日から、来季の日本リーグ1部に昇格する栃木ブレックスの監督に就任する。この日午前、同監督は全国大会25冠の功績を評価され、秋田県教育委員会から感謝状を贈られた。会見では約1時間、18年間務めた母校監督を退き、後任に佐藤信長氏(37)を決めた経緯などを説明した。

 加藤監督は90年から18年間、常勝チームを指揮し総体、国体、選抜の全国3大大会を25度制した。黄金時代を継続しながらも、5年ほど前から退任の選択肢を考え始めたという。「もっと早く世代交代が行われた方が良かった。若い人に監督を譲ることが、秋田県スポーツ界の活性化につながる」。転機になったのは、昨年秋の秋田わか杉国体だった。「地元開催の国体で監督をしてみたかった。大きな大会が終わって、タイミングが合った。プロの世界で生きてみたいと思った」と振り返った。

 後任には、最近まで日本リーグ・パナソニックの現役選手だった佐藤氏を推した。「彼の生きざまは、しつこい。所属していた住友金属は廃部になって、アイシンでは能代工の先輩に首を切られた。いろんな経験をしているのがいい」。佐藤氏には指導歴も教員免許もないが「佐藤流で思いっきりやればいい」と意に介さなかった。今後も外部コーチとして、能代工の指導も折を見て手伝うという。

 この日午後には栃木へ移動。1日の監督就任会見に備えた。「能代工を指導した経験で、生きるものはない。もう1度スタートラインに立って、一から勉強。今までより2倍も3倍も努力します」と力を込めた。【柴田寛人】